『ダンまち』18巻、なぜ大ヒットした? “クライマックスの連打”というべき圧倒的な展開を読む
大森藤ノの人気シーズ最新刊『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているのだろうか18』が1月21日の発売以降、Amazonの和書ランキングで1位になるなど、大ヒットを記録している。
『ダンまち』シリーズは2013年にスタートし、派生作品も含めるとGA文庫だけでこれまでに30冊以上が刊行されている。2023年1月からはテレビアニメにて『ダンまちⅣ 深章 厄災篇』が放送されるなど、話題に事欠かない同シリーズだが、最新刊がこれほどまでに人気となったのはなぜだろうか。
ライトノベルに詳しい書評家のタニグチリウイチ氏に話を聞いた。
「『ダンまち』シリーズ最新刊は、前巻の刊行から1年半ぶりとなるのですが、これは待たされて当然だと思うしかないほど、とてつもない濃さを持った一冊に仕上がっています。もはや絶体絶命ともいえる状況の中を、一陣の疾風が走ってとてつもない驚きと感動をもたらします。もはやクライマックス中のクライマックスとも言えそうな場面まできて、ふとページ数を見るとようやく半分といったところ。それくらいの密度の物語であり、大森藤ノさんに『ここまで書き上げてくれてありがとう』という感謝の言葉が泉のように湧いてきました。
『ダンまち』シリーズに最初に触れたとき、いわゆるダンジョンラブコメ物といった印象がありました。若くて頼りない新米の冒険者がダンジョンに入って美少女たちと出会い、仲良くなりながら冒険を繰り広げていく物語だと思ったんです。実際、ベル・クラネルという主人公がダンジョンでアイズ・ヴァレンシュタインという少女の剣士に助けられ、恋をするところまではラブコメ的なイントロダクションを思わせます。しかしその後の展開は予想とは違って、ベルはひたすらにアイズのことを思い、彼女に近づきたいと願いながらだんだんと強くなっていく。すごく一途な物語なんです。ベルの成長物語として、巻数を重ねるごとにキャラクターの魅力が増していくこと、その冒険の行方を見極めたいと思える作品になっているからこそ、『ダンまち』シリーズは人気を増していったのだと思います」
最新刊では、シリーズ史上屈指のバトルが繰り広げられることも、大きな注目を集めた理由だという。
「作中でベルにはさまざまな試練が訪れました。ダンジョンの中にうごめき、冒険者たちにとってはただの敵でしかなかったモンスターの中に知性を持ち、言葉を理解する者もいることがわかってベルを苦悩させます。モンスターだから狩ればいいといった単純な構図ではなくなり、ダンジョンそのものの成り立ちにまで及ぶ設定の深さが見えてきて、どこに向かうかといった興味を誘います。
また、17巻ではダンジョンが存在する街・オラリオにて最強と言われているフレイヤ・ファミリアの主神であるフレイヤが、ベルに並々ならぬ関心を持っていろいろと仕掛けてきました。その前哨戦ともいえるエピソードを経て、ベルが所属するヘスティア・ファミリアがいよいよフレイヤ・ファミリアと激突するのが第18巻。これが評判にならないはずがありません」
まさにクライマックスの連打というべき圧倒的な展開となっているという『ダンまち』18巻だが、今後の展開もますます目が離せないとタニグチ氏は続ける。