【漫画】まるで大正時代の文学作品! 青年の不思議な出会いを描く『十次と亜一』が味わい深い

ーー物語の舞台だけでなくキャラクターの台詞や動きからもレトロな雰囲気を感じた作品でした。創作のきっかけを教えてください。

コドモペーパー:本作は漫画の即売会に出展するために創作した作品です。編集担当さんと相談し、これまで描いてきた漫画よりもキャラクターを前面に出した作品を描くことを意識していました。また私は江戸川乱歩をはじめとするひと昔前の小説が好きで、文学作品のような雰囲気を出したいと思いながら本作を創作しました。

ーー本作の世界観も大正から昭和初期に出版された文学作品のような印象を受けました。

コドモペーパー:自分は小説や民話といった作品から物語を想像することが多く、本作では江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』を参考にしましたね。また同作と同じ年代に出版されたミステリー小説も参考に物語をつくりました。

ーー作中ではたびたび「切り絵」のような表現が見られました。

コドモペーパー:これらは実際に切り絵をつくり、原稿用紙に貼って印刷しています。もともと切り絵だけで漫画をつくっており、本作も過去作と同様に切り絵だけで作り上げる予定でした。ただ本作用の切り絵をつくるなかで肩こりに悩まされてしまい、お話の長い作品となる予定だったので切り絵は部分的に用いることとしました。

 切り絵で表現された画には少し怖いイメージがあると思っていて。そんな切り絵をどのように使うか編集担当さんと話し合うなかで、本作では心象景色が描かれるシーン、とくに強迫観念のある場面で切り絵を用いています。

ーー切り絵以外の線はなにで描いている?

コドモペーパー:万年筆を用いています。言葉にできないくらい小さなものかもしれませんが、アナログの画材で描いた原稿にはいい雰囲気が表れると思っていて。見ている人に伝わるほど大きなものではないかもしれませんが、私にとって描いていて気分がいいのはアナログの画材なので、万年筆を選んでいるという感じです。

ーー十次さんの描く現代ではあまり見られない画風の絵が魅力的でした。

コドモペーパー:十次の描いているものは大正時代などに描かれた漫画を参考にしています。昭和初期ごろまで新聞の漫画記者を勤めた岡本一平といった漫画家さんの絵を参考にしていますね。

 100年くらい前に生きていた人たちがつくった漫画や文学作品でも、現代の私たちの感覚や姿勢とそんなに変わらないなと感じています。今の私たちとも通じる価値観が描かれたり、ときにトレンディドラマのような展開も描かれたりするところが面白いなと思い、江戸川乱歩や岡本一平をはじめとする大正や昭和時代の作品に魅力を感じています。

ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。

コドモペーパー:イラストは1枚の絵で表現することが多いですが、漫画は何個も絵がつながっており、作品の中で時間が流れたり止まったりするところが面白いと思っています。キャラクターの性格や雰囲気がわかるシーンを描くことで登場人物が現実にいるように感じることもできるため、表現方法として漫画に面白さを感じていました。漫画という表現方法を試してみたかったことが漫画を描きはじめたきっかけですね。

 また漫画は多くの人が見たいと思っているものだと感じ、イベントなどで多くの人に作品を手に取ってもらうためにも漫画を描こうと思いました。ただ漫画を見たい人だけでなく、漫画を描きたい人も想像以上に多くいることを知りとても驚きました(笑)。

ーー今後の目標を教えてください。

コドモペーパー:今まで漫画は趣味として自分の心情などを題材に描いていたのですが、ありがたいことに掲載に関するお話をいただく機会も増えてきました。今後はどうやったら受け取る人がわかりやすさや面白さを感じられるかというところも真剣に考えて、作品をつくっていきたいと考えています。

 

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「著者」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる