【ライトノベル最新動向】8月は映画化の『ツルネ』新作や『夏へのトンネル、さよならの出口』作者の最新作に注目

 8月19日に京都アニメーション制作のアニメ映画『劇場版ツルネ ―はじまりの一射―』が公開となる。原作は、京アニが立ち上げたライトノベルレーベルのKAエスマ文庫から出ている綾野ことこ『ツルネ ―風舞高校弓道部―』シリーズ。映画公開と同じ日に最新刊となる『ツルネ ―風舞高校弓道部― 3』が刊行となってシリーズ人気を盛り立てる。

 高校の弓道部を舞台にした物語。主人公の鳴宮湊らが全国大会で好成績を残したこともあって、所属する風舞高校弓道部は大勢の新入部員を迎えることになった。中には部の方針に反発する新入部員もいて大変そう。湊とは中学時代のチームメートで、貴公子と呼ばれる藤原愁が所属する桐先高校でも、同じように新入部員による騒動が起こる。

 弓道系配信者として活躍する朝比奈洋が所属する羽稲高校もライバル校として加わって広がる物語の中、弓を引くことを探求する少年たちの日々が描かれていく。KAエスマ文庫から出たおおじこうじ『ハイ☆スピード!』を元にした京アニによるアニメ『Free!』が水泳男子への関心を引きつけたように、弓道男子への注目がぐっと高まる夏となりそうだ。

 9月9日にアニメーション映画として公開される『夏へのトンネル、さよならの出口』の原作を出してデビューした八目迷の新作『琥珀の秋、0秒の旅』が8月18日にガガガ文庫から登場。世界の時間が止まってしまった中で、なぜか動ける修学旅行中の少年と、地元の不良少女が、時間を動かす手がかりを求めて東京を目指す。

 中に入ると何でも欲しいものが手に入るというトンネルに、少年と少女が挑んだことで起こる不思議な現象を描いた『夏へのトンネル、さよならの出口』や、時間を進んでは戻る不思議な現象に巻き込まれた少年が、いったんは起こってしまった悲しい事態を起こらないようにしようと足掻く『きのうの春で、君を待つ』と同様、時間をめぐる物語が繰り広げられる。

 ガガガ文庫からは、第16回小学館ライトノベル大賞で優秀賞の澱介エイド『SICK-私のための怪物-』も刊行。人の精神に侵入して恐怖症を引き起こす寄生体を殺すことをしていた少女に起こる副作用のようなものが、少女の精神を蝕んでいく内容で、SFとサイコサスペンスが合わさった雰囲気を味わえそう。

 SF的な内容の作品では、ファンタジア文庫から8月20日発売の獏末カナイ『JDとプロフェッサーの黄昏戦記I』が面白そう。JDと呼ばれるアンドロイドが普及した世界では、戦争もJDどうしを戦わせるようになっていた。トキヤは整備士として、政府軍に所属する個性豊かな少女型のJDたちを担当していたが、反政府軍の攻勢を受ける中である策を取る。人間とJDの特徴が合わさることで生まれる強さを確かめられる一作だ。

 MF文庫Jから8月25日に登場の十文字青『恋は暗黒。』は、暗殺者という裏の顔を持ちながら、普通の高校生になりたいと願う高良縊想星と、その想星に一目惚れして告白し、彼女になった白森明日美が、それぞれに秘密を持ちながらも学校では恋愛関係を繰り広げるという、アクションともラブコメディともとれそうな作品。一筋縄ではいかない設定を好む作者らしいライトノベルだ。

 男子だと思っていた幼馴染みが女子だったという設定のライトノベルが競演する8月のスニーカー文庫。はむばね『男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について2』と、雲雀湯『転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件5』からは、子供としての友達づきあいが男子と女子の関係になっても同じものなのか、それとも変わって来るのかが感じられそう。

 人付き合いのあまり良くない近衛秀一が、子供の頃に唯一心を開いていた友達のゆーくんが、烏丸唯華という名で見合いの相手として現れ驚く『男子だと思っていた幼馴染みとの新婚生活がうまくいきすぎる件について』。最新の第2巻では唯華の妹が加わって2人の生活に波乱が起こりそう。

 『転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件』は、隼人が男の友情を交わしたと思った春希と7年後に再会したら実は女子だったという設定から、学校では清楚な美少女を装っていた春希が隼人という相棒を得て、だんだんと変わっていく姿が描かれていく。最新第5巻では、隼人との間に昔から続く男友達としてではない意識を芽生えさせる春希が描かれる。2人はどこに向かうのか?

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