「魔法科高校」「とある」の番外編が急上昇 『わたしの幸せな結婚』最新刊も人気のライトノベルランキング

「魔法科高校」「とある」番外編が話題

 累計発行部数2000万部の佐島勤『魔法科高校の劣等生』と3100万部の鎌池和馬『とある魔術の禁書目録(インデックス)』。ライトノベルでも屈指の人気を持つシリーズの“番外編”がそろって登場し、Rakutenブックス週間ライトノベルランキング(6月6日~12日)の上位に並んだ。

 まずは『魔法科高校の劣等生 Appendix1』(電撃文庫)。シリーズについて説明するなら、魔法が存在し、魔法を扱える魔法士たちが国家の運営に大きく関与しているという世界設定の中、突出した魔法の力をもった一族に産まれた司波達也と司波深雪の兄妹が、日々の学園生活から国家の存亡に関わる事態に至るまでの様々なエピソードを積み重ねていく。

 現在シリーズは、国立魔法大学付属第一高等学校を卒業し、魔法大学に進学しつつ魔法師たちの地位向上を目的とした「メイジアン・カンパニー」を立ち上げ、活動をはじめた達也や深雪の姿を描く『続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー』へと移っている。『魔法科高校の劣等生 Appendix1』は、そんなふたりがまだ高校生活を送っていた時代に起こった奇妙な事件を描く。

 事件とはまさに“異世界転移”と呼ぶべきもの。本来なら魔法大学へと送られるはずだった未確認文明の魔法技術製品「聖遺物(レリック)」が、第一高校に届いて人知れず起動。その夜、気がつくと達也は自分がファンタジーゲームの舞台のような世界にいて、純白のドレスを着て国王の娘となっていた深雪から、王国を守る近衛隊長だったことを教えられる。

 深雪はすっかり異世界の住人になっていたが、達也は現実世界の記憶を受け継いでいた。達也が見ている夢ではないことは、朝になって目覚めて顔を合わせた深雪が、目覚める前に兄の達也と深い関係になろうとした状況を、どこか引きずってドギマギとしていることからも感じられた。

 深雪以外にも異世界に現れた第一高校の生徒たちの中で、先輩の七草真由美も達也と同じように現実の記憶を持っていて、目覚めてからも夢での出来事を覚えていた。達也は第一高校を中心に起こっている、何か不思議な出来事に巻き込まれているのではないかと推察する。

 本編には描かれていないこのエピソードは、テレビアニメとして放送された『魔法科高校の劣等生』のBD/DVDに特典として付けられていた小説「ドリームゲーム」をまとめたもの。いわばファンサービスで、レギュラーのシリーズでは見られそうもない登場人物たちの言動を楽しめる。

 決められたシナリオに沿って世界が進んでいるらしく、達也と深雪を結びつけようとする動きに乗る深雪と、妹に手を出すまいと懸命にこらえる達也のギャップが面白い。真由美が驚くような衣装で登場した場面など、イラストがないのが残念だ。

 「聖遺物」が作り出すシナリオに流されまいとして意識を強く持ち、現実世界のような戦略級の魔法師としての能力が使えなくても、冷静な判断力でピンチを乗り越えていく達也はやっぱりカッコ良い。新シリーズの『続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー』でも「聖遺物」が登場して、人類からコミュニケーションの能力を奪うなどして世界を混乱の渦に叩き込もうとしている。こちらの「聖遺物」は何が目的なのか。読んで確かめよう。

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