【漫画】61歳、仕事なし漫画家の「病み」に賞賛の嵐 恥ずかしくて読まれたくない『毎日、病んでます』

扶桑社のWEBマンガサイト「マンガSPA!」で連載中の桜壱バーゲン『毎日、病んでます』が好評だ。本作は昨年末に読み切りで公開されるや、SNSを中心に瞬く間に絶賛の声が広がり、連載が決まった。
作者の桜壱は『絶望の犯島 -100人のブリーフ男vs1人の改造ギャル-』(櫻井稔文名義、双葉社)、『漫画ルポ 中年童貞』(リイド社)などで知られる。人間の欲望や社会の裏側を、過剰なほどに誇張した絵とギャグで描いてきた。過去作を漫画サイトで閲覧しようとすると「センシティブな表現を含む」と注意を促されることもしばしば。
そんな作風と打って変わり、本作では物悲しげだが愛おしい作者の日常が描かれる。61歳で仕事のない現状。売れっ子漫画家の妻には面目ない思いを抱え、若手編集者からは舌打ちまじりの冷たい仕打ち。しかし、それでも妻は惜しみない愛を向けてくれるのだったーー「病み」の一言では片付けられない、悲喜交々があふれる本作。その舞台裏を桜壱に聞いた。
【漫画『毎日、病んでます』第1話を試し読み】

バズりの裏でカツ丼を食べながら号泣
――『毎日、病んでます』が好評です。「マンガSPA!」での公開後には編集部に数百通の「連載希望」のメールが届いたそうですね。
桜壱バーゲン(以下、桜壱):びっくりしましたね、誰も読まないと思ってたので。実際、恥ずかしくて読まれたくない内容だから、公開日にはXで「読まないでください」って告知しようと思っていたくらい。
――しかし、公開日には、数えきれないほど絶賛のポストが相次ぎました。
桜壱:その日、妻の実家に車で帰ってたんですよ。行きの運転している最中にマンガが公開されたんですけど、妻が助手席でずっと騒いでて。「もう300いいね付いてる!」とか「Xのおすすめに上がっている!すごい!すごい!」とかって。漫画も繰り返し読んでクスクス笑ってて。
でも、俺はハンドル握ってるからXを見れないじゃないですか。そのあとホテルに着いて、レストランでカツ丼食いながらスマホ見たら、ものすごい数の好意的なコメントがされてて。それで俺、泣いちゃったんですよ…。
――作中でも号泣していましたが、そこでも泣いてしまったんですね。
桜壱:カツ丼を食いながら61歳の男が号泣してるって、それはもう取調室じゃないですか。刑事に泣き落とされたのかと。そんな俺を見て、また妻が大笑いしていて。

――奥様はNHKでドラマ化された『透明なゆりかご』(講談社)などで知られる沖田×華(ばっか)さんですね。本作では奥様との日常が描かれていました。
桜壱:マンガSPA!編集長の加藤さんに"俺から見た妻”を描いてほしいって依頼されたのが発端ですね。最初、妻はすごく可愛く描いて、俺は徹底的にブサイクに描いてネーム(漫画のラフ画)を持って行ったんですけど、そしたら「もっとリアルに描いて!」ってボツを出されて。
老いた自分のリアルな顔なんて描きたくないじゃないですか。でも、しょうがないから絵をスッキリさせて、背景の書き込みも減らして。
――桜壱さんの漫画といえば、下ネタギャグや過剰にデフォルメした絵で知られますが、本作では印象がかなり違いました。
桜壱:そういうダメ出しを受けて、気付かされたところはありました。「キャラクターが濃いのに、背景まで濃いって読みにくいよな」とか。こんな絵を描いてたから、2年間も仕事が来なかったのかなあ……って。
いつか危険な目に会うよ?若手編集者への忠告

――桜壱さんが2年ほどお仕事から遠ざかっていたというのが意外でした。
桜壱:でも、今は漫画の編集者でも俺のこと知らないんですよ。
――第1話では、若い編集者に持ち込みで冷たくあしらわれたことを描いていますね。
桜壱:ページに入りきらなかったんで端折ってますけど、他にもムカつくことは山ほどあったんですよ。とにかく俺を見る目つきがひどくて…。
別に持ち込みを断るのはいいんですよ。そんなことでは俺も怒ってなくて。態度ですよね、態度。だって、60歳超えて、2年間仕事のない漫画家が持ち込みに来てるんですよ? そんなの「無敵」じゃないですか。
――無敵の人ですか…。
桜壱:無敵のジジイが決死の覚悟で持ち込みに来てるのに、そんな態度取ってたら、いつか危険な目に合いますよ。自分の身を守るためにも、機嫌よく帰ってもらう技術を身につけたほうがいいと思う。これは本当に、忠告として。
――『中年童貞』の画像はSNSでミーム化していますし、桜壱さんの絵を目にしたことのある人は多いと思うのですが。
桜壱:漫画家って仕事がなくなってくるとSNSから離れちゃうんですよね。告知できることが無いから。俺も犬とか料理の画像を上げてはいるんですけど、そんなにSNSは見てないんです。
――ここ数年ほどはどんな過ごし方をされていたんですか。
桜壱:キャンプとかしてましたね。
――アクティブですね。
桜壱:俺、キャンプよりグッズを買うのが好きなんですよ。その頃、ソロキャンプが流行ってて、ヒロシのキャンプ動画とかを見ながら「このベンチに座って、コーヒー飲みながら焚き木して…」とかって妄想しながらネットでグッズ買うのが楽しくて。
でも、現地行ったら、テントの組み立て方がめちゃめちゃ難しくて、2時間もかかったんですよ。「え? これを帰るときに解体するの!?」と思ったら、もう絶望で。で、ふと横見たら、連れて行った犬が羊のフンを食べてるんですよ。「うわっ!」と思って、やめさせようとしたら、引っ掻かれて手が傷だらけになって。
――……。
桜壱:しかも、夜は凍えるくらい寒いんですよ。そのせいで犬がおしっこするから、テントの中がおしっこまみれになるんです。それで、テントの中を拭いてたら、隣のテントで若いDQN(不良を指すネットスラング)が騒いでるんですよ。ズンズン重低音で音楽鳴らして一晩中騒いでて。「もう二度と来るか!!!」って怒りながら帰ってきました。あれは病みましたね。
――「病み」というか、少し楽しそうに聞こえたんですが…。
桜壱:全然、楽しくないですよ! あとね、仕事のない間に筋トレもやったんです。ムキムキマッチョになってやろうと思って。
でも、俺の行ってたジムが、じいさんとばあさんばっかりなんですよ。プールに行っても、すべてのレーンがじいさんとばあさんで埋まってて。右からじいさん!ばあさん!ばあさん!じいさん!じいさん!じいさん!って感じで独占してて、いつまでも空かない。それでもう「イッーー!」とイライラして、ろくなことにならなかったですね。
気の進まない風俗取材の毎日
――すいません…そのお話もなぜか楽しそうに聞こえてしまいます。しかし、桜壱さんと言えば、風俗ルポ漫画でも知られるので、もっと破天荒な生活を送られているのかと思っていました。
桜壱:俺、もともと風俗が全然好きじゃないいんですよ。潔癖症なんで。
――そうなんですか!? それは正直、かなり意外です。
桜壱:30代のときに酒の席で編集者とケンカして仕事がなくなったんです。その頃に知り合いの漫画家の先生が紹介してくれたのが風俗のルポ漫画で。食うために始めた仕事でしたね。なのに、読者の人たちは、俺がものすごいスケベだと思っているんです。大きな勘違いですよ!
――気の進まない”取材”も多かったですか?
桜壱:すごい憂鬱でしたよ。しかも、北海道に2泊3日で行って4店舗回ったあとに、翌日に沖縄に飛んで…みたいなスケジュールでしたから。いくらスケベな人でも、それはしんどいでしょう。お店を回った後のお酒だけが楽しみでしたね。実際に、風俗ルポの仕事を離れてからは一度も行ってませんし。
――桜壱さんのイメージが変わった読者も多いような気がします。
桜壱:俺、妻しか友達がいないんですよ。一人で飲みにも行くのも嫌いだし、四六時中、妻と一緒にいて。でも、だから、仕事がない間も鬱になりすぎなかったかもしれないです。友達が多くて、周りが頑張っていると焦っちゃうと思うんですよね。
――今後は、そんな生活を作品で描いていくと。
桜壱:そうですね。実は仕事のない間も企画は考えて持ち込みにも行っているんですよ。そこでのキツいのエピソードを惜しまず出していこうと。61歳で持ち込みに行くってこういうことだぞ!っていう現実を知ってもらいたいなと。
あとは妻との生活ですよね。妻は発達障害を持っていて『毎日やらかしてます。アスペルガーで、漫画家で』(ぶんか社)っていう漫画も描いているんですけど、それに俺も登場するんです。だから、今度は、俺から見た妻を漫画にしたいなと。妻のファンの人にも読んでもらいたいです。
――これからの連載も楽しみです!ありがとうございました!























