吉沢亮が『国宝』では見せなかった顔とは? 血を求めた『ババンババンバンバンパイア』の表情

吉沢亮の「バババ寄り?なお顔」とは?

 先日2月19日、渋谷Bunkamuraオーチャードホールで、第99回キネマ旬報ベスト・テン表彰式が行われた。華々しいスピーチを飾ったのは、主演男優賞を受賞した吉沢亮。選考対象になった主演映画『国宝』は、2026年もまだ公開中のメガロドン級ロングラン上映作品であり、興行収入200億円を突破したことで歴代興収ランキング10位に躍り出た。

 第98回アカデミー賞のノミニー(メイクアップ&ヘアスタイリング賞)であることも大きな話題性の一つだが、話題を吉沢に限ってもキネマ旬報ベスト・テン以外に第50回報知映画賞や第38回日刊スポーツ映画大賞、第80回毎日映画コンクールなど、国内の主要映画賞の主演男優賞を総なめにしている状態だ。2025年の映画界の顔に誰もが惚れた……。そもそも主演俳優の顔に寄ってばかりいた『国宝』のカメラ自体、歌舞伎の女形を演じる吉沢にぞっこんだった。動員に貢献した1400万人以上の観客たちは、吉沢亮の顔攻めに遭ったともいえる。

 カメラも接写攻めにしたくらい、吉沢の顔が魅力的であることに議論の余地はない。でもこれだけ一辺倒だと、そろそろ『国宝』以外の顔も見たくなる。すると授賞式の翌日、吉沢亮&STAFF X上に嬉しい記念写真がポストされた。吉沢を真ん中に、『国宝』で日本映画監督賞を受賞した李相日監督、日本映画脚本賞を受賞した脚本家・奥寺佐渡子が写る。吉沢は少しおどけたポーズ(美容家IKKOの「どんだけ~」ポーズにも見える)と表情でカメラ目線。ポスト文には「バババ寄り?なお顔」と書いてあるが、吉沢亮の「バババ寄り?なお顔」とは?

ありそうでなかったバンパイアの好み設定

 「バババ」とは、主演男優賞のもう一つの選考作品である『ババンババンバンバンパイア』(2025年)のことである。本作は『国宝』の約1ヶ月後に公開された。撮影の順番は『国宝』が先であり、同作クランクアップから1ヶ月後にクランクイン。作風も役柄も対照的で、任侠の世界から歌舞伎の人間国宝にまでなる主人公を、透徹した眼差しで描き出す『国宝』に対して、『ババンババンバンバンパイア』は吉沢のあられもない全裸まで映し出す、艶笑的なコメディ作品。

 『国宝』の撮影で精神をすり減らした吉沢にとって、自由な演技を開放できる現場だったという。舞台は老舗の銭湯。吉沢演じる主人公・森蘭丸はあの戦国武将・織田信長にも仕え、2025年で450歳になる。瀕死の状態で彷徨い歩いていたところを、銭湯の息子・立野李仁(板垣李光人)に助けられ、風呂掃除をしながら住み込みで働いている。夜の業務はバンパイアの習性上、好都合だったのだ。

 そして何より、蘭丸には李仁の血を吸うという目標がある。しかも「18歳童貞」という条件付き。李仁が18歳に達するのを待ち続け、思春期の高校生になった彼が初恋をしようものなら、「童貞喪失絶対阻止」を金看板に掲げる。考えてみると、蘭丸のような血を好む設定はありそうでなかったかもしれない。奥嶋ひろまさによる原作漫画には、「ある者は子どもの血を好み」、「またある者は処女の血がいいと言う」など、他のバンパイアの好み例が挙げられている。その上で蘭丸は「私の場合は18歳童貞これに限る」と明言する。

「今年の吉沢亮は血を求め過ぎてる」

 さらに蘭丸は「私は女子には興味ありません」とも言いきる。「10代男子特有のほどよく付いた筋肉と脂肪の黄金比」と説明しながら舌なめずりまで。とにかく「18歳童貞」。ただし、「童貞」にも注釈が付く。「童貞は美しい だが ただの童貞ではダメだ」、「血が汚れていると血の味が濁る」、「髪を染めたりピアスをしたりするだけでも味は大きく落ちる」と細かい。好みがうるさい蘭丸にとって李仁は「一切の混じり気がない100年に1度の出来栄え」であり、「15歳にしてすでに芳醇な香りが漂い始めている」。もはやワインの蘊蓄話にしか聞こえない。

 でも確かに古今東西、バンパイアが渇望する血の好みは多種多様だ。例えば、原作でも紹介されている「処女の血」を好むバンパイアなら、知る人ぞ知るマニアック映画『処女の生血』(1974年、原題は『Blood for Dracula』で、監修がアンディ・ウォーホル、製作がイタリアの名プロデューサー、カルロ・ポンティ!)に登場する。怪優ウド・キア演じるドラキュラは処女の血しか飲めない設定で、逆に処女以外の血を飲むと発作を起こす。処女だと思ったのに処女ではなかった令嬢の血を懲りずに飲んで、何度も悶える様子がややコミカルでもあった。さらにドラキュラを退治する使用人を演じるジョー・ダレッサンドロの惜しげもない肉体美で魅せる。ジム・ジャームッシュ監督作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(2013年)のバンパイアたちは、現代のデトロイトに身を潜め、汚れた現代人の血は飲めないという設定。綺麗な血で作ったアイスキャンディを常用していた。犯罪者の血を吸って不味いと言う蘭丸同様、好みがうるさいバンパイアにとって現代社会は住みづらいようだ。

 年齢的なことでいえば、蘭丸より年上のバンパイアもいる。大英帝国が栄華を誇っていた1897年、ブラム・ストーカーが吸血鬼文学の金字塔『吸血鬼ドラキュラ』を出版したが、一般的にドラキュラ伯爵のモデルは15世紀ワラキア公国の君主ヴラド=ツェペシュ=ドラキュルだと考えられているため、蘭丸より100歳くらい年上ということになる。上には上がいる。ジョン・カーペンター監督作『ヴァンパイア/最期の聖戦』(1998年)でジェームズ・ウッズ演じるバンパイアハンターが戦うのは、最古のバンパイアだった。しかも元神父で600歳。大先輩バンパイアの存在を考えると、蘭丸は中堅どころだろうか。吉沢のキャリアもまた中堅に入ったというのに、依然として若々しい見た目には何かバンパイア的美容の秘密でもあるのだろうか…? 

 キネマ旬報ベストテン授賞式のスピーチで吉沢は、『国宝』で横浜流星演じる歌舞伎界の御曹司の血(血筋)を求め、『ババンババンバンバンパイア』で18歳童貞の血を求めたことから、「今年の吉沢亮は血を求め過ぎてる」と言われたエピソードを披露していた。両作からたっぷり養分を吸った後だからか、「バババ寄り?なお顔」は、興奮する森蘭丸のように、不思議と色っぽく火照っていた。

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