ラノベ隆盛の中、宮部みゆきが生涯書き続けたい作品も……立花もも解説! 7月の文芸書週間ベストセラー
ライトノベルのランクインが続くなか、宮部みゆき『きたきた捕物帖』の続編が刊行され、9位に。宮部みゆき自身も「生涯、書き続けていきたい」という本作、謎解き×怪異×人情×時代小説と銘打たれれば、宮部みゆきファンなら飛びつかずにはいられない一作だ。
宮部みゆき『子宝船 きたきた捕物帖(二) 』(PHP研究所)
舞台は、宮部の時代小説ではおなじみの江戸深川。16歳で岡っ引き見習いの北一は、亡くなった親分の本業だった文庫売り(本や小間物を入れる箱を売る商売)で生計を立てる日々。岡っ引きとして独り立ちするよりも、自前の文庫を作って売るのが夢という、ちょっとヘタレな少年だ。そんな彼が、暗い過去をもつ釜焚きの喜多次と出会ったのが第一巻。第二巻でも喜多次とともにさまざまな事件に巻き込まれていくのだが、宮部自身がコメントを寄せているように、本作の「きた(北)きた(喜多)」コンビは華麗に難事件を解決する名探偵というわけではない。〈市中で起こる大小のトラブル、もめごとを解決するトラブル・シューター、つまり何でも屋〉と宮部は言うが、だからこそ、読む人の心にじんわり沁みる人間模様が味わえるのである。
『桜ほうさら』や「ぼんくら」シリーズなど、過去の作品とのリンクも垣間見えるのもまた、読みどころのひとつ。ぜひとも前作とあわせて手に取っていただきたい。