ラノベ隆盛の中、宮部みゆきが生涯書き続けたい作品も……立花もも解説! 7月の文芸書週間ベストセラー

立花もも推薦 7月の文芸書週間ランキング

 文芸書の週刊ベストセラーランキングの中から注目作品を立花ももが解説。7月はどんな作品が登場するのか。早速行ってみましょう!

 7月期【単行本 文芸書ランキング】 (7月5日トーハン調べ)

 1位 丸山くがね『オーバーロード15 半森妖精の神人 [上]』(KADOKAWA)
 2位 丸山くがね『オーバーロード15 半森妖精の神人 [上] イラストカード付特装版』(KADOKAWA)
 3位 石原慎太郎『「私」という男の生涯』(幻冬舎)  
 4位 江口連『とんでもスキルで異世界放浪メシ12 鶏のから揚げ×大いなる古竜』(オーバーラップ)
 5位 之貫紀『 Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 06 』(KADOKAWA)
 6位 甘岸久弥『魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 8』(KADOKAWA)
7位 東野圭吾『マスカレード・ゲーム』(集英社)
8位 逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)
9位 宮部みゆき『子宝船 きたきた捕物帖(二)』(PHP研究所)
10位 猪本夜『七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない』 (アルファポリス)

 1位は約二年ぶりのシリーズ続編となる『オーバーロード15』。さらに2位は同作のイラストカード付特装版で、発売直後、はやくも重版が決定。累計1100万部を突破する人気シリーズの貫禄を見せつけた。

丸山くがね『オーバーロード15 半森妖精の神人(上)』(KADOKAWA)

 本作は、DMMO-RPG(仮想現実体感型オンラインゲーム)「ユグドラシル」に魂が転移してしまった男の物語。「ユグドラシル」では700種類もの種族と2000以上の職業を組み合わせ、外見を含め、誰ともかぶらない自分だけのオリジナルアバターをつくることができるのだが、キャラクターだけでなく住居やアイテムも自在にデザインできることから、これまでの戦闘が主だったDMMO-RPGと一線を画した人気を誇っていた。ところが一大ブームを巻き起こしたそのゲームにも、サービス終了の日が訪れる。終了時間ギリギリまでログインし、仲間とともにつくりあげた〝ナザリック地下大墳墓〟で感慨に浸っていた主人公。ふと気がつくと、彼は骸骨姿のアバター「モモンガ」そのものになってしまっていたのだった……。

 興味深いのはモモンガの姿が悪の魔王そのものであり、主人公が心をこめて育てた能力はそのまま引き継がれているため、使う魔法も最凶最悪であること。モモンガがうっかり口にしてしまった「世界征服」という言葉を仲間が鵜呑みにしてしまったため、モモンガはその強大な力をもちいて世界を支配するための冒険に出なくてはならなくなるのだが、対抗勢力との戦いやその道中を通じ、「ユグドラシル」というゲームの壮大な世界観を読者も体感できるところも、またおもしろい。確かにこんなゲームが存在していたら、現実なんてそっちのけで夢中になってしまうだろうし、主人公のように天涯孤独の身であればなおさら、この世界でずっと生き続けたいと願うかもしれないという説得力もある。

 本作はマッドハウスの制作で2015年にアニメ化し、現在は第4期が放送開始したばかり。これほど息が長く愛され続けるシリーズ、ふだんは異世界ファンタジーやライトノベルは読まないという人たちも、一度、その奥深い世界の入り口に立ってみるのもいいかもしれない。

 なお、4位『とんでもスキルで異世界放浪メシ』も、タイトルから察せられるとおり、料理好きのサラリーマンが異世界に召喚される物語。異世界に行ってもただの一般人としか扱われない彼が、唯一そなえているのが、お金を支払えばもとの世界からどんな商品も呼び寄せるができる「ネットスーパー」というスキルだというのが、ちょっと笑えて、惹かれるところ。しかも元の世界の食材を食べると、ちょっとした効能があることから、主人公のまわりには続々と人が集まってきてしまう。1巻「豚の生姜焼き×伝説の魔獣」から始まり、「羽根つき餃子×幻の竜」「赤身肉のステーキ×創造神の裁き」「ホルモン焼き×暴食の祭典」などと続いて最新作のサブタイトルは「鶏のから揚げ×大いなる古竜」。いったいどんな冒険が待ち受けているのか。シリアスよりはコミカルが好み、という人にはこちらがおすすめ。

江口蓮『とんでもスキルで異世界放浪メシ 12 』(オーバーラップ)

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