色覚障がいやジェンダーの壁を越えて活躍するポップアーティスト、テネシー・ラブレス・インタビュー

色覚障がいやジェンダーの壁を越えて活躍するポップアーティスト、テネシー・ラブレス・インタビュー

 アメリカが生んだ最注目のポップアーティスト、テネシー・ラブレス(Tennessee Loveless)氏の個展が日本で初めて開催され、大きな話題を呼んでいる。東京のラフォーレ原宿6F「BE AT STUDIO HARAJUKU」を皮切りに、全国各地を巡回していく今回の個展。その初日(6月24日)、個展に合わせて初来日していたテネシー氏にインタビュー。「BE AT STUDIO HARAJUKU」の会場内でアメリカ本国のアトリエを模した展示スペースにて、日本での個展にかける想いやアーティストとしてのルーツを伺った。

東京はアーティストにとって完璧な場所

――テネシーさんはずっと東京に来たかったそうですね。初めて訪れた印象はいかがですか?
テネシー:アメージングです(笑)。アーティストとしての活動を開始した当初から、いつか日本の皆さんに作品をご覧いただく機会があればと強く思っていました。だから今回、個展のお誘いをいただいたときは、言葉で言い表せないほど嬉しく、日本を訪れることも楽し
みにしていました。

 来日にあたっては、先入観なく、自分の目で見て、東京を感じたいと思っていました。だからあえて何も調べないで来たんです。何を見ても全部素晴らしいだろうと思っていたのですが、実際に訪れてみると、本当にどこを見ても美しい。自分のあらゆる感覚が高まっています。東京は、アーティストにとって“完璧な場所”だと思いますね。あと、日本のチキンは最高です。チキンが大好きなアメリカ人が言うので、これは間違いないですよ(笑)。

――それは意外な感想です(笑)。原宿は日本のポップカルチャーの発信地でもあります。世界的なポップアーティストであるテネシーさんから見た、原宿の印象はいかがですか? 

テネシー:インスパイアされることばかりです。どの標識を見ても、どの角を曲がっても、あらゆる物事がインスピレーションになりますね。アメリカにも原宿のような街があったらいいのにと思います。

――来日にあたり、日本をイメージした新作『Harajuku Dreams』を描き下ろしてくださいました。

テネシー:『Harajuku Dreams』は、スタッフから、富士山や東京タワーといった日本の代表的なモチーフを教えてもらい、そこからイメージを膨らませて描きました。なので次は、自分の目で見て感じたことを描いてみたいです。実際に日本を訪れてみて、この先イメージがどう変わっていくか、いまの時点では自分にもわからないのですが、次回作は『Harajuku Dreams』と逆になるんじゃないかなと自分でも期待しています。

――それはとても楽しみです。今回の個展では、象徴的な作品群がダイジェストで楽しめるようになっています。展示構成には、どのような意図があったのですか?

テネシー:“回顧展”としての位置づけです。初期の作品の中から、自分の手元に所持している作品を中心に紹介する内容にしました。これまで世界各地で個展は開催していますが、実は回顧展のようなかたちで開催するのは、今回が初めてなんですよ。

 裏を返せば、“イントロダクションの展示”でもあります。日本の皆さんは、初めて私の作品をご覧になる方も多いのかと思ったので、“自分を紹介するための展示”という意味合いも大きいです。

今回の展覧会は世界で初めてとなる回顧展

 今回の展示作品には、自分の歴史の中で意味の深い作品や、初めて展示する作品もあるので、そういう点にも注目していただけたら嬉しいです。

――既存のファンはもちろん、テネシーさんの作品に初めて触れる人も楽しめる内容なのですね。

テネシー:そのとおりです。展示にあたり、主催側(アミューズ、アールビバンの共同主催)から、何が必要なのか、どういうイメージにしていきたいかを伺った上で、じゃあこうしましょうと、調整役として展示構成に関わりました。私の作品には、いくつかのシリーズがあって、例えば最初期に描いた「ドラァグクイーン」のシリーズは、「無名の人」がメインテーマです。作風は、幾何学模様を中心としたものを多く制作しました。

 一方で「アート・アウトサイダー」シリーズは、“強い意志を持ち、つらい試練を乗り越え、他に類を見ない天才的な才能で世界を変えた人物”をテーマに、フィンセント・ファン・ゴッホなど、ある程度一般に知られていような人々を描いています。

 展示する作品は、いずれも自分が描いたものなので、必ずストーリーがあります。そのストーリーをアレンジして、どういう風に見せたいかを自分で考えて、構成しました。選ばれる作品に共通点がないと駄目だと思っていたので、ストーリー性は重視しましたね。

――確かにテネシーさんは、ドラァグクイーンなど、ジェンダーの問題も芸術的な視点から訴えている。メッセージ性の強い作品を数多く展示されていますね。

テネシー:アーティストとして一番やりたいことは、アートを通して人々のライフストーリーを伝えることなんです。どんな人物にも、必ずアメージングで素敵なストーリーがあります。さまざまな異なる文化があり、人もそれぞれ違いますが、絵を通して鑑賞者と心を通わせたいという気持ちで描いています。

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