ミステリ界の寵児・潮谷験はなにが凄いのか? 新作『エンドロール』の仰天すべき展開

潮谷験『エンドロール』のすごさ

 その事態を憂いているのが、新進作家の雨宮葉だ。理由は、病死した人気作家の姉の遺作である。その遺作が陰橋の件と繋がり、現在の若者たちの自殺に影響を与えているかもしれないのだ。しかし、姉に執着する雨宮は、それを否定したい。動画投稿者の遠成響に誘われ、自分の主張を述べた雨宮。これが縁になり、サッカー部主将の箱川嵐も加えた三人で、ネットテレビに出演し、陰橋を信奉する三人と対決することになるのだった。

 この議論の場から、ストーリーは捻じれに捻じれていく。次々と事件が起こり、意外な事実が明らかになる。過去のアイドルの自殺まで絡んだ真相は、仰天すべきもの。最後の最後まで、作者に翻弄されてしまった。

 さらに全体を通じて、物語とは何かという問いかけがなされている。才能溢れる姉に執着し、屈折しまくっている雨宮が到達した境地は、物語の力を信じていながら、溺れてはいない。こうした物語に対する想いは、作者自身のものであろう。堂々と物語論を披露した潮谷験が、これからどのような作品を書くのか。新作が、ますます楽しみである。

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