【漫画】殺されたはずの母親をめぐる”16年目の真相” 倉田真由美、衝撃の新作『凶母』を語る

倉田真由美、新作『凶母』を語る

 『だめんず・うぉ~か~』の著書であり、「くらたま」の愛称で知られる漫画家の倉田真由美さんがこの秋、新境地を切り拓く。これまでノンフィクションのギャグ漫画を得意としてきた倉田さんだが、彼女が新たに挑むのは、なんと本格長編ミステリーだ。

 10月26日より、各電子書店にて配信がスタートした最新作のタイトルは『凶母(まがはは)~小金井首なし殺人事件 16年目の真相~』。物語は、凄腕の霊能者(本当は催眠術師)・東郷高峰のもとに、16年前に発生した「小金井首なし殺人事件」の被害遺児・日佐川椿希が訪れることから始まる。

 「殺されたはずの母親によく似た人を見かけた」という椿希。東郷は退行催眠によって、親の死を受け入れさせるつもりだったが、逆に椿希の「あれは母親だった」という確信を強めてしまう。もう一度、母親に会うことを願う椿希だったが数日後、彼女は首なし遺体で発見されることに――。

 「まったく漫画が描けない時期もあった」と振り返る倉田さん。これまでとは異なるイメージの作品を描くまでの葛藤、そして本作に込めた思いを聞いた。(佐藤結衣)

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倉田真由美が描く衝撃の新作『凶母』の第一話を読む

「やっぱり何か描く人でありたい」と模索した日々


――『凶母』は、これまで積み上げられてきたキャリアとはまた異なる作品ですね。どういった経緯でこちらの作品が生まれたのでしょうか?

倉田真由美(以下、倉田):『だめんず』が2013年に終わったんですけど、そこから8年くらい漫画家としては立ち止まった時期を過ごしていたんですね。テレビとかに出ても「漫画家の倉田さん」って紹介されるけど、「漫画を描いてないのに? “元”漫画家じゃない?」って自分でもツッコミながら暮らしていたのが、自分としてはすごく居心地が悪くて。やっぱり何か描く人でありたいと思っていました。でも、なかなか描けなくて。紙とペンを持つのも辛くなってしまったのをきっかけにペンタブを購入したんですよ。当時、47歳。20代の若者に混ざって講習会にも行きましたが、なかなか身につかず。本も2~3冊買いましたが、目が滑っていくだけで、YouTube動画を見てもちんぷんかんぷん。「ああ、これ私もう無理なのかな。やっぱり年齢的にも厳しいのかな」なんて思っていたときに、たまたま元ギャルで7歳年下のの女友だちから「今から漫画家目指そうと思っていて、ペンタブ買ったんですわ」みたいなことを言われて(笑)。彼女の勢いに刺激される形で、もう一度ペンタブに向き合って。ママ友のイラストレーターにごはん会みたいな感じで教わり始めたら、どんどん描けるようになったんですよね。やっぱり仲間の存在って大きいなって。これなら、また描けるかもって自信がついて、『凶母』のプロットを漫画にしようと動き出しました。

――模索中、すでにプロットは完成されていたんですか。

倉田:ストーリー自体は、2年半くらい前には小説のように書き上げていました。3~4ヶ月くらいで完成したのかな? だから、この作品に関してはネームに困ることにないんですよ。もう展開が決まっているので。

――では、今回の作品は出版社側からの企画ではなかったんですね。

倉田:そうです。自分で描いて持ち込みました。これでどこの出版社にも引っかからなかったら、SNSとか使って自分でWeb公開しようかな、なんて思っていたくらい。もう、自分でも超新人デビューだと思っていて。これは、本当に処女作みたいなもんです。

――フルデジタルという面でも新しい挑戦なんですね。

倉田:そうです。だから1話目は今見直しても、顔の描き方だったりレイヤーが多すぎたりで「未熟だな」って自分でも思うところもたくさんあって、直したいくらい。やっぱりデジタルは何度でも修正が効くってところ、アナログと違うところだなって感じています。私、雑な性格をしているので、アナログとデジタルの線の味の違いってそこまで気にならなくて。むしろ、ある程度納得の行くところまで簡単に直せて、トーンとかベタもパッと塗れる感じは、すごく私の性格には合っていたなって思うんです。むしろ、アナログだったらこんな長編にチャレンジできなかったな。これまで8ページが最高だったんですけど、今はその3倍の24ページが描ける。

――その差は構図を考える上でも大きいですか?

倉田:全然違いますね。例えば、1ページどんっと使ってシーンを描くのも、8ページだったら残りの話が全然入らないってなっちゃうんですけど、24ページならそういうメリハリもつけられる。大きな変化だと思います。

コミカルな絵で描くミステリーの違和感を楽しんでほしい

――1話のラストシーンは衝撃でした。もともと倉田先生の絵はギャグ漫画として親しんでいた分、その落差にゾッとして。

倉田:ありがとうございます。その違和感こそが、私の最大の武器かなって思っているんです。もうみなさんたくさん漫画に慣れていらっしゃるので、こういう絵だとこういうお話みたいなのってなんとなくあると思うんです。先入観に近いものが。そこを逆手にとって、面白さになったらうれしいなって思っています。

――ノンフィクションとフィクションと、作り方は変わりますか?

倉田:そこまで変わらないですね。ただ、やっぱり思いきりやれるのはフィクションかなって。ノンフィクションだとどうしても、自分の言葉として出す責任が伴ってくるので。本当は、そういうセーブをかけずに思ったままを本音として出していける作家のほうが、読み手としては面白いっていうのはわかっているんですけどね。「これは出していい情報か、だめな情報か」ってスクリーニングかけちゃうと、どんどん当たり障りのない作品になっていっちゃうし。だから、私はもともとエッセイ向きの性格じゃないなって思うんです。みっともない話も、それが「みっともないことだ」とわかってて描いてる。本当は、それも無自覚で天然な感じのほうが面白いじゃないですか。

――たしかに、世の中の批判を受けて「これ、だめなの?」と気づくタイプの方もいらっしゃいますよね。

倉田:そう。そのくらいの人のほうが、やっぱり熱烈なファンもつきやすいですよね。それは漫画もそうだし、小説も、YouTube動画とかもそうだと思うんです。でも、私って本来はそんなに深刻に悩んでいることもないし、人を妬むような毒っ気もないし、更年期とかも全然大したことなかったし……なんもねえなみたいな(笑)。だから、むしろ計算されてないと描けないミステリーの漫画が描けるっていうのは、自分の中でも大きな救いになったというか。今はすごくワクワクしています。

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