【漫画】殺されたはずの母親をめぐる”16年目の真相” 倉田真由美、衝撃の新作『凶母』を語る

倉田真由美、新作『凶母』を語る

「誰が?」「なぜ?」をためてためて、一気に解放される快感を届けたい

――ミステリーをいつか描いてみたいという気持ちはおありだったんですか?

倉田:はい。小説とかもミステリーばかり読んでいるくらいなので。オーソドックスに東野圭吾さんの作品が好きですね。もともと私はリアリストで数学的な思考が好きで、東野先生の作品は計算され尽くしているから気持ちがいいんですよね。理系でカチッと構築していて、そこに人間のフェティシズムが少し入っている、みたいなそういう作品に惹かれます。

――ミステリー好きになった原点となる作品はありますか?

倉田:たぶん、若い人は知らないと思うんですけど、昔テレビで『ゴールデン洋画劇場』って番組があったんですよ。『刑事コロンボ』とか数々の名作映画がやってたんですけど、そのなかでも一番好きで印象に残っているのは『料理長(シェフ)殿、ご用心』っていう映画で。ちょっとコメディな要素もありつつ、世界的なシェフが得意な料理方法で殺されていくっていう話なの。例えば、鴨の血のソースのなんちゃらというメニューの得意な料理の人が、血まみれで殺される……みたいな。

――なぜ、料理のように……。

倉田:そこなんですよ! 気持ち悪いじゃないですか。でもちょっと面白くもある。そのあたりが、私の好みなんですよね。だから、『凶母』も気持ち悪くしたくて。

――たしかに「なんでそんな写真を撮っていたんだろう? 気持ち悪い……」っていう部分も読んでいてありました。

倉田:やっぱりミステリーの魅力って、謎が解ける快感じゃないですか。「なんで?」っていう疑問から「意味がわからない」っていう奇妙さとか、謎が謎を呼んでたまりにたまったフラストレーションが「そういうことだったのか」と一気に解き放たれる快感。私がミステリー好きだからこそ、読者の方にそれを届けたいなって。矛盾だらけのトリックとか、急に現実離れした設定が出ることだけは避けて物語を練り上げました。ミステリーって「誰がやった?」「なぜやった?」「どうやってやった?」と謎はいろいろありますけど、今回は「誰?」と「なぜ?」の部分ですよね。「どうやって」は首なし死体でハッキリしているので。

――トリックというと、「どうやって?」の部分にフォーカスが当たるものは、結構「それはわからないや」って最後までもやっとしてしまうこともありますね。

倉田:そうなの。例えば、氷のつららで殺すとか、密室殺人とかね。でも、どうやって殺したかみたいなところには、個人的にはそんなに興味を持てなくて。やっぱり、「誰が?」「どうして?」の部分に焦点を置いた話にしたいなと思いました。これはもう好みの問題ですね。


――今回のトリックについてはどうやって考えたんですか?

倉田:どうだったっけな? トリックを思いつくときって、いろいごちゃごちゃ考えていて「これがこうなって、こうなったら、こうだよな?」みたいなのがつながったときなんですよね。少なくとも私の場合はそうで。自分が罪を犯す立場になったとき、どうしたら完全犯罪に近いことができるかなって逆算していく感じ。

――それがリアルに感じられるからなんでしょうか? どこか、読み進めていくうちに「これノンフィクションじゃないよね?」みたいな気分になることがあって。

倉田:あはは。フィクションですよ(笑)。小金井っていう地名もなんとなく語呂がよくて出てきただけの話で、参考にした過去の事件があるとかではないので安心してください。キャラクターたちも、物語の整合性を合わせるために動かしている感じなので、特にモデルにした人物とかもないです。

――東郷高峰っていう名前が、すでに胡散臭い雰囲気を醸し出していていいですよね。

倉田:それはツッコまれそうな名前にしたくて、狙いました(笑)。描いていて好きなキャラではあるんですけど、オールバックが難しくて。私が今まで描いたことのない髪型だから。でも、この男はオールバックにするしかないなって思っていたので仕方なく描いてますけど。やっぱりオールバックにはちょっと怪しい匂いがありますよね。カタギじゃなさそう感というか。

――この霊能者を名乗った催眠術師という設定はどうやって思いついたんですか?

倉田:私、幽霊とか全然信じてないんですけど、催眠術はかかったことがあって。昔、体験ルポ漫画を描いたときに。「腕にヒモをかけます」って言われて、もちろん目には見えないけれど本当にその感触がしたんですよね。私、なんでも信じるタイプとかでもないんですけど、実際に自己暗示でそういう感覚を得られるというのは身を持って知ったので。面白いからぜひ機会があったら、1度やってみてください。

――レモンが甘くなるみたいなのは確かに体験してみたいですね(笑)。では、催眠術師ではなく霊能者を看板にしているのはなぜですか?

倉田:催眠術だとビジネスになりにくそうだなって思って。今みたいに「1度やってみて」くらいなノリなんですよね。でも、霊能者だともっと切羽詰まった状況の人が救いを求めてやってくる。催眠術で10万円は無理かもしれないけど、本当に困っているときのお祓いなら取れるよなって。そういう魂胆を持った人物にしたかったんですよね。

「50代はミステリーでいく」そして新たに見えた目標も

――この『凶母』というタイトルもまたインパクトがありますよね。

倉田:これは自分で決めました。漫画のタイトルは、編集の方と「これかなー」って決めることも多いんですけど、今回は自分のなかでプロットが完成したときに「これしかない」とバシッと決まりましたね。きっと読み終わったときに、納得していただけるタイトルになっていると思います。

――もうすでに続きが気になって仕方がないんですが、エンディングまでは何話くらいの予定なんですか?

倉田:ありがとうございます。そう言っていただけるとうれしいな。まだハッキリは見えていないんですけど、プロットの段階で10万字超えているので、24ページずつで描いていくと20話は超えるのかな? 私がサボりさえしなければ、月1本ペースで発表できると思うのでお待ちいただければと思います。飲んで、サボらなければね(笑)。

――そこはぜひ楽しみにしているのでお願いします(笑)。ミステリーは今後も、本作以外にも描いていきたいとお考えですか?

倉田:はい。もうプロットができているものは3つほどあるんです。50代はミステリーでいくぞっと思っています。最近、これは漫画の原作もできるのかな、なんて考えもあって。私が描く面白さっていうのもきっとあるでしょうけど、誰かに描いてもらうっていうのもいいなって。もっと絵の上手い人に(笑)。

――いやいや。でも、たしかに物語の雰囲気に応じて絵が変わるのも楽しみです。

倉田:そうなんです。「この事件はこの人の絵で」っていうのが合致したら、もっと面白く呼んでもらえるんじゃないかなとかって思っています。あとは、ミステリー好きとしては映像化できたらいいなとも思ったり。おどろどろしい話だから、深夜帯とかで超極端な俳優さんに思いっきりやってもらいたい!

――新境地を開拓されたことで、ビジョンがぐっと広がりますね。では、最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします。

倉田:そうですね。私の漫画を読んだことある人に「あの倉田真由美が?」と先入観を持って読んでもらいたいっていう気持ちもありますし、逆に私の作品を全く読んだことがない人にもまっさらな気持ちでこの絵でこの物語を読んでもらいたい気持ちもありますので、両方ありですね。いずれにしても最初に持つ感情を裏切る展開になっているので。戸惑ってほしいですし、最後には「こういうことか」と思わせる自信があるので、ぜひたくさんの人に読んでほしいと思います!

『凶母(まがはは)~小金井首なし殺人事件 16年目の真相~』

Renta!(https://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/item/273514/title/892363
コミックシーモア(https://www.cmoa.jp/title/230917/vol/1/
DMMブックス(https://book.dmm.com/series/?series_id=4125173
まんが王国(https://comic.k-manga.jp/title/153819/pv
ほか、各電子書店にて、10/26(火)より1~3話一斉配信(以降、月1話配信)
価格:150円(24ページ)
※10/26~11/8までのキャンペーン期間中、上記4書店では1話を無料配信します

●倉田真由美(くらた・まゆみ)
1971年、福岡県生まれ。一橋大学卒業後、「ヤングマガジン」(講談社)ギャグ大賞を受賞し、漫画家デビュー。自身の恋愛遍歴を元に2000年より「週刊SPA!」(扶桑社)にて連載を開始した「だめんず・うぉ~か~」がブレイク。漫画・エッセイなどの執筆活動のほかに、新聞・雑誌、テレビ・ラジオのコメンテーターとして、恋愛から政治問題まで幅広く”くらたま流”のコメントをしている。

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