痔、八百長告発、自決……定年のない文豪たちにとっての「45歳」とは

文豪たちにとっての45歳とは?

 45歳が転機となった最も有名な作家といえば、三島由紀夫だろう。1970年11月、45歳の三島は私兵組織「盾の会」のメンバーと共に、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地の総監室を占拠。バルコニーで憲法改正を訴え自衛隊に決起を促す演説をした後、割腹自殺を遂げる。自伝的エッセイ2篇と自死直前のロングインタビューを収録した『太陽と鉄・私の遍歴時代』は、三島がこうした行動に至った背景を知る手がかりとなる一冊だ。

たえず安逸と放埒と怠惰へ沈みがちな集団を引き上げて、ますます募る同苦と、苦痛の極限の死へみちびくところの、集団の悲劇性が必要だった。集団は死へ向って拓かれていなければならなかった(「太陽と鉄」)

そこで生まれるのは、現在の、瞬時の、刻々の死の観念だ。これこそ私にとって真になまなましく、真にエロティックな唯一の観念かもしれない(「私の遍歴時代」)

次のプランは何もないんです。もう、くたびれ果てて……(「三島由紀夫最後の言葉」)

 本書を読むと明らかなのは、文章の端々に自決へと向かうフラグが立っていたということ。そして45歳の三島が、作家として行き詰まりを感じていたということだ。死に魅入られた弱気な文豪に、「三島由紀夫の代わりとなる作家なんていないのだから、頑張ってくださいよ」と、亡くなっているとわかっていても、思わずはっぱをかけたくなる。

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