『コタローは1人暮らし』の背景にある深い事情とは? 原作漫画から読み解く、感動の理由

『コタローは1人暮らし』原作漫画にも注目

 コタローがふとした瞬間に見せる子どもらしい一面や、彼をさり気なく守ろうとするワケありな大人たちとコタローのやり取りに癒される本作だが、時にしっかりと取材されていることが分かる虐待やネグレクトを受けた子ども特有の言動や考え方が描かれ、ドキッとさせられることも。けれど、同時にそんな子どもたちが出すサインを漫画を通して学ぶことができるのだ。

 『コタローは1人暮らし』が感動を与えるのは、私たちに忘れかけた人と人との繋がりの温かさを思い出させてくれるからだろう。核家族化や地域コミュニティの希薄化によって、現代は地域の人や近所の人など、他人の家庭事情を窺い知ることが難しくなった。子どもの虐待やDVの被害に気づきにくくなったことはもちろん、そこに至るまでの家族の苦しみや変化も見逃してしまいがちで、気づいたとしても他人が足を踏み入れることに抵抗を感じやすくなったということもあるかもしれない。

 本作では7巻の時点でコタローの母親と父親はまだ登場していないが、コタローが語る思い出から親自身も苦しみや葛藤を抱えていたことが暗示される。コタローが幼くして一人暮らしせねばならなくなるまで、彼の家族に介入する人は誰もいなかったのだ。けれど、コタローがひとりぼっちになってから現れた大人たちはみんな“お節介”だった。そして自己満足な正義を振りかざすのではなく、コタローの思いに寄り添いながら、少しでも彼の人生が良い方向へ進んでいくよう道を舗装していく。めまぐるしい変化があるわけでもない、小さな一歩。たくさんの大人たちが積み重ねていくコタローのための行動が心をじんわりと温める。

 笑って泣ける漫画の『コタローは1人暮らし』も合わせて、川原瑛都が演じるリアルなコタローの可愛さや、原作の狩野にビジュアルがぴったりな横山裕の熱演が見どころなドラマを堪能してほしい。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。

■書籍情報
『コタローは1人暮らし』(「ビッグコミックスペリオール」連載中)
著者:津村マミ
出版社:小学館

■放送情報
『コタローは1人暮らし』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30~0:00放送
出演:横山裕、川原瑛都、山本舞香、西畑大吾(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、百田夏菜子(ももいろクローバーZ)、生瀬勝久、光石研、峯村リエ、大倉孝二、イッセー尾形、出口夏希
原作:津村マミ『コタローは1人暮らし』(小学館)(『ビッグコミックスペリオール』で連載中)
脚本:衛藤凛
音楽:篠田大介
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、尾花典子(ジェイ・ストーム)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
監督:松本佳奈 ほか
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日、ジェイ・ストーム
(c)津村マミ/小学館(『ビッグコミックスペリオール』連載中) (c)テレビ朝日

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