41歳の脱サラ漫画家が描く『王様ランキング』がバズった理由とは? 作品に込められた「希望」
SNSの口コミを中心に話題となり、累計発行部数(2021年3月31日現在)は100万部を突破、21年10月よりフジテレビ「ノイタミナ」枠でのTVアニメ放送も決定している漫画『王様ランキング』。
本作の驚くべき点は人気を博すまでの道のりである。作者の十日草輔氏は41歳でサラリーマンを退職した後、Web漫画の投稿サイトにて『王様ランキング』を発表。Twitterを筆頭にTV番組やYouTubeなどで多くの人が作品を紹介したため知名度が急速に高まった。
星の数ほどの漫画作品がインターネット上で公開されるなか、なぜ『王様ランキング』は数多くの読者を獲得したのであろうか。本稿ではその理由を検証してみたい。
『王様ランキング』は「ボッス王国」の第一王子「ボッジ」が世界一立派な王様を目指す物語である。王様の息子であるボッジは口を利くことができず、子ども用の剣すら振ることもできない非力な子ども。家来や民衆から陰口を言われてしまうほど、信望の薄い王子であった。そんなボッジが味方である「カゲ」と出会いストーリーは進んでいく。
そんな『王様ランキング』だが、第一に挙げられる特徴は、絵本のような画風だろう。ボッジをはじめ作中に登場するキャラクターはデフォルメをきかせた造形であり、老若男女を問わず受け入れられやすい画風だ。作者の十日氏は絵本作家を目指していた過去があるそうで、その経験が本作に生かされていることが感じられる。
また登場人物の「感情」の描き方も特徴的だ。作中では、言葉をうまく話せないボッジが喜怒哀楽を表現するシーンがあるが、当然口の利けないボッジは感情を言葉にすることができない。
例えば1巻の「第10話」では、次期国王の座を剥奪されたショックがきっかけで、ボッジの顔は青ざめ、歯を食いしばり、涙を浮かべ、非力なこぶしで空を切りながらゴロゴロと地面に転がる。目を閉じ落ち着きを取り戻したかと思うと、再度歯を食いしばりながら目を見開き、言葉にならない大声をあげるなど、6ページにわたりボッジの姿が描かれるが、単に言葉で描写されるよりも感情の伝わり方がよりダイレクトだ。
また本作の魅力の一つとして「裏切りの展開」が数多く描かれている点が考えられる。
王様の遺言によりボッジが次期国王に決定したが、民衆に発表する場にて弟のダイダに王様の座を剥奪されてしまう。旅をともにするキャラクターが仲間の手により、大量の炎が巻き上がる大穴に突き落とされ消息を絶つ。ボッス王国の四天王である騎士たちが武器を持ち、相まみえ戦うシーンがあったりと、仲間だと思っていた人物による裏切りや対立が多く描かれている。
温かみのある絵から想像することは難しい、状況の一変や仲間の裏切りは読者に大きな衝撃を与える。衝撃的な展開の連続で、今後がとにかく気になってしまうストーリー構築は秀逸だ。