『コタローは1人暮らし』の背景にある深い事情とは? 原作漫画から読み解く、感動の理由
関ジャニ∞の横山裕が連続ドラマ初主演を務める、新ドラマ『コタローは1人暮らし』(テレビ朝日系)が4月24日より放送開始となった。
このドラマの原作は「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で連載中の津村マミによる同名漫画。“アパートの清水”203号室で訳あって一人暮らしを始めた4歳の男の子・さとうコタローが、隣の202号室に住む漫画家・狩野進をはじめ、地域の人たちと交流する様を描いた心温まるストーリーが人気を博し、コミック累計発行部数は100万部を突破している。
ドラマは横山演じる狩野が主人公としてコタローを取り巻く環境が描かれているが、原作はコタロー目線で展開していく。ただコタローが一人暮らしを始めた時点から物語がスタートしていくので、私たちは何も彼について知らない状態だ。だから、狩野や201号室のキャバクラ嬢・美月や、いかにも悪そうな102号室の住人・田丸のように、まるで自分も同じアパートの住人になった感覚でコタローの人となりを少しずつ知っていくことになる。
アニメ『とのさまん』をこよなく愛し、「おぬし」「わらわ」「〜ぞ」と言った“殿様語”を使うコタロー。好きなキャラクターの喋り方を真似る子どもらしい一面もありながら、基本的に無表情で笑顔をほとんど見せず、家事を完璧にこなし、他人の変化に人一倍敏感な大人びた4歳児だ。そんなちょっと変わった少年の姿がコミカルに描かれていくので、「4歳で一人暮らしをしているなんて何か事情があるに違いない」と予感しながらも、最初はギャグ漫画に思えるかもしれない。しかし、早くも一巻の「4日目」でコタローのこれまでが伺えるエピソードが挟まれる。
それはヒモ状態の彼氏に思い悩み、酔いつぶれたまま朝を迎えた美月の姿をコタローが目撃した時のこと。コタローは美月の顔を見て何かを感じ取り、コンビニで買った冷凍のペットボトルを彼女に渡す。その場に居合わせた狩野は全く気づいていなかったが、実は美月の目元には泣きはらした跡があったのだ。必死で誤魔化す彼女に、泣いても美月のことを嫌ったりしないとまっすぐな瞳を向けるコタロー。狩野に、なぜ美月が泣いていたことに気づいたのか、泣いた後に目を冷やすという対処法を知っているのかと問われたコタローはこう語る。
「わらわは、大人の泣いている姿を、よく目のあたりにしてきた」
自分が幼かった頃のことを思い出してみてほしい。もちろん、時には親が泣いている場面を目撃することもあるだろうが、そんなに頻繁に見るものだろうか。きっと多くの親は子どもに自分が泣いている姿を見せることに抵抗があり、子どもは親の泣いた顔よりも笑っている姿の方が印象に残っているはずだ。だからこそ、コタローのその一言で深い事情は分からずとも、彼が笑顔の少ない家庭で育ったことがわかる。
他にも夜遅くに放送されている『とのさまん』をテレビと至近距離で観ている姿から、「早く寝なさい」「テレビから離れて観なさい」と注意してくれる大人がいなかったことや、行きつけの銭湯が休業でたった2日お風呂に入れなかっただけで、不快な思いをさせないために人と近づくことを極端に避ける姿から側にいた誰かから“汚いもの”扱いされた過去が伺えたりする。