頼もしい男が赤ん坊に? 『笑ゥせぇるすまん』喪黒福造が叶えた“不気味な夢”

『笑ゥせぇるすまん』喪黒福造の人助け(?)

老顔若体(中公コミックスーリ2巻)

 73歳ながら、50代に見られることが多い会社社長の出雲若志。しかし体力は確実に低下しており、ゴルフをプレーした後は疲れきってしまう。顔の若さに見合わない老いた身体にショックを受けていると、なぜかゴルフ場のロッカーに喪黒が現れ、出雲に「ココロのスキマがある。お助けしてもいいですよ」と告げた。

『笑ゥせぇるすまん』(2巻)

 憤慨する出雲は喪黒を追い返すが、ウェイトトレーニングを初めたものの、逆に身体を痛めてしまう。そこへ現れた喪黒は行きつけのバー「魔の巣」に誘い、「肉体の若さをプレゼントする」と話し、特製の鉄アレイをプレゼント。そして、「マッスルマッスル私の身体ムキムキになーれ」と言いながら13回振ると、身体も若くなると持ちかけた。謎の鉄アレイで身体を鍛えた出雲はみるみるうちに身体が若返っていく。そんな出雲に喪黒は「ほどほどにしてください。自然に逆らっているのですから」と忠告する。

 若い身体を手に入れ有頂天の出雲。飲み屋でホステスから「あそこも鍛えているの?」と誘われると、呼応してホテルへと向かう。若さを見せた出雲だったが、シャワーを浴びると顔がしわしわになり、髪も抜け、ガイコツのような老人になってしまった。

 そんな様子に喪黒は「人は自然に年を取っていくのが一番のようですな。オーッホホホ」と笑った。

 最後は悲劇を迎えてしまったが、「若い身体を手に入れたい」という夢は叶えた喪黒と、調子に乗ってしまった出雲に下った天罰。人間の愚かさを感じさせるエピソードだった。

喪黒流の人助けか

 人間として生きることができなくなってしまった喪黒のターゲットたち。かなりひどい仕打ちのようにも思えるが、全員が現実社会に絶望しているところを、喪黒によって開放されており、「助けられた」とも捉えることができる。喪黒流の「人助け」は、「日々の社会生活から開放する」ということなのかもしれない。

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