頼もしい男が赤ん坊に? 『笑ゥせぇるすまん』喪黒福造が叶えた“不気味な夢”
『笑ゥせぇるすまん』の主人公で、「ココロのスキマを埋める」と称してターゲットに近づき人々を陥れる喪黒福造。その手法は様々で、ターゲットにした人々の生活を破壊してしまうこともある。今回はそんな喪黒によって魂を抜かれてしまった人物を見てみよう。
頼もしい顔(中公コミックスーリ1巻)
大企業で課長を務め、誰からも頼られる存在の頼母雄介。俳優の芦田伸介に似ていることから、夜の女性からもモテモテで、部下からの信頼も厚く、さらに家でも妻子に頼られる、まさにパーフェクトな人間だ。
そんな頼母だが、内心はそんな自分に嫌気がさしていた。飲み会に参加し、平気な顔をして店を出たものの、実は飲みすぎて気分が悪くなっているところを喪黒が声をかける。頼母は「子供の頃からずっと頼りにされている」「甘える人がいない」と、悩みを打ち明ける。すると喪黒は「頼れる人物を紹介する」と約束した。
一度は喪黒を追い返した頼母だが、勤務中の妻からの電話や、部下の「交通事故を起こしたからなんとかしてほしい」、さらには夜の店でホステスが寄っかかってくることに憤慨。喪黒を頼ることにする。
喪黒は「素晴らしい女神を紹介すると促し、あるアパートの一室に入るよう促す。すると大仏様が「おいで、ぼうや」と声をかける。頼母は膝にもたれかかると「いい気持ちだ。まるで雲の中にいるみたい」とつぶやき眠ってしまった。
その後、夫の行方を探し会社を訪れた頼母の妻。喪黒は妻に声をかけると、「今、ご主人は療養されているんですよ」と紹介し、部屋に連れて行く。妻がドアを開けると、凛々しかった頼母は赤ん坊に戻ったように抱かれ、全裸で髪がチリチリのおばさんにしがみつき、乳を吸っていた。
「頼られる存在」から頼母を開放してあげたとも取れるエピソード。屈強で頼りがいのある男を「赤ん坊」にしてしまうのは少々やりすぎにも思えるが、これも喪黒流の優しさだったのかもしれない。
ナマケモノ(中公コミックスーリ1巻)
不動産のセールスマンながら、営業成績が全く振るわない佐保民生。彼は動物園でナマケモノを見ながら、「羨ましい」と呟く。そこへ喪黒が近づき話を聞くと「僕は生まれついてのナマクラものでね」「家族もいるしナマケモノに徹するだけの度胸も金もない」「仕方なく中途半端な生活をしている」と話した。
セールスマンにもかかわらず、月に15日はサウナで暇をつぶすという佐保。喪黒は同じセールスマンということもあるのか、「あなたの代わりに土地を売ってくる」ともちかけ、ナマケモノの人形を渡し佐保の爪を入れて「ナマケモノになりたい」と念じるように命じる。
その後、喪黒は次々と契約を取り、週間成績1位に躍り出る。有頂天になっていた佐保だが、上司から「契約はとっているが入金がない」と怒る。しかも、客に電話すると、すでに入金済みなのだという。
慌てた佐保はサウナにいた喪黒に金を返すよう迫るが、「あなたをナマケモノにする費用です」と一切拒否。佐保は「ナマケモノになんかなりたくない」と人形を投げつけるが、喪黒は「あなたはナマケモノになるんだ、ナマケモノになる」と言って指を向け、ドーンと叫び暗示をかける
佐保は病院に入院してしまい、喪黒が病室を訪れると、ナマケモノのように天井から吊るされた木に掴まっていた。喪黒は「治療費」として、謎の金を医師に渡した。
この結果は佐保にとって望ましいものだったのかは不明だが、「ナマケモノになりたい」というは夢を、叶えたことになる。