『ハイキュー!!』影山飛雄、本物の“コート上の王様”になるまでーー天才の挫折と仲間との出会い

『ハイキュー!!』影山が本物の"王"となる日

そして、最強の「コート上の王様」へ

 チームで戦うことを学び、スパイカーが打ちやすいトスを上げることに徹するようになった影山は、どんなときでもできるだけスパイカーの要望に応えようとする。

 しかし、高校No1セッターとも言われていた宮侑に言われた「プレーがおりこうさん」という言葉に引っ掛かりを覚えた影山。ユース合宿から戻ってくると、思うようにプレーが決まらないことに苛立ちを隠せなくなっていた。影山は、無意識のうちに本来の自分のプレースタイルを抑え込み「おりこうさん」になっていたのだ。

 前述の菅原のセリフや、烏養コーチが言った「最高のトスを上げることはコミュニケーションで探っていくもの、でもケンカをするなというわけではない」というセリフは、そこでさらに深い意味を持つ。

 影山は、周囲の言葉と自分のトスに応えてくれるチームメイトによって、スパイカーの要求に応えるだけが、セッターの役割ではないことに気がつき、封印していた「王様気質」を取り戻した。

 「おりこうさん」と言った宮侑擁する稲荷崎高校との春高2回戦。「一時、俺に上げる本数を減らしてくれ」というスパイカー田中に対し、影山は「いいえ」と断る。「田中さんの攻撃が必要です」。ユース合宿以前の影山だったら、田中の要望に応えただろう。しかし、チームで勝つための選択として、影山ははっきりと断った。そして、田中は影山の脅迫(と書いて「しんらい」というルビが振られている)に応える。

 ユース合宿から戻ってきて、烏野のチームメイトとぶつかった第224話のタイトルは「返還」。そして、この田中へのセッティングがあった第285話のタイトルは「静かなる王の誕生」だ。


 「コート上の王様」と言われていたころ、影山はそれを侮辱と受け取っていた。しかし、初めての春高で、影山は誇りと仲間を手にした最強の王となった。今は日本が世界に誇るセッターへと成長しているが、それらは全て烏野時代に培ったセッターとしてのスタイルがあったからなのだ。

文=ふくだりょうこ(@pukuryo

■書籍情報
『ハイキュー!!』(ジャンプ・コミックス)既刊43巻
著者:古舘春一
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/haikyu.html

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