岡田将生×志尊淳の“除霊”シーンはどうなる? ヤマシタトモコ『さんかく窓の外側は夜』は新感覚の“除霊”漫画

ヤマシタトモコ『さんかく窓の外側は夜』評

 ヤマシタトモコの漫画『さんかく窓の外側は夜』の実写映画化が決定し、2020年某月に公開予定と発表された。メインキャストは、除霊師である“冷川理人”を演じる岡田将生、霊を視る目を持つ“三角康介”を演じる志尊淳の、豪華なW主演である。原作は『MAGAZINE BE×BOY』(リブレ)にて、2013年4月から現在も連載中であり、単行本としては2月10日に第8巻が発売される。

 今作はミステリ・ホラーに属するものだが、ヤマシタトモコの初単行本はボーイズラブ(BL)作品の『くいもの処 明楽』である。それが大ヒットし、2007年「このマンガがすごい! BL部門」で1位を獲得。その後も数々のBL作品を出版し、ヤマシタトモコの名前は名BL作家として知られるようになった。しかしヤマシタトモコの本領はBL作品にとどまるものではなかった。『HER』、『ドントクライ、ガール』で2011年「このマンガがすごい! オンナ編」の1位・2位独占する快挙を成し遂げる。

 『HER』はオンナたちの本音を描く全6篇の連作オムニバスからなっており、『ドントクライ、ガール』は女子高生と裸族の男との爆笑青春コメディである。その後も、社交ダンス部の青春を描いた『BUTTER!!』や2055年の日本が舞台の、独特なSF世界に飲み込まれる『花井沢町公民館便り』など様々なジャンルの作品を発表。コメディ・青春・SF・ヒューマンドラマ等ヤマシタトモコはもはやBL作家ではくくれない、多彩なジャンルで活躍している大人気漫画家だ。

 そんなヤマシタトモコが初めて手がけるミステリ・ホラー作品が今作である。書店で働いている三角康介は幼少の頃から霊を視ることができ、その存在に対し恐怖を抱いていたが、なすすべなく逃げ続ける生活を続けていた。霊に怯えながらも仕事をしていたある日、強引な男により除霊の手伝いをさせられる羽目になる。

 その強引な男・冷川理人は素質のある三角を「運命の人」だと言って離さず、無理やり除霊の仕事を手伝わせるようになる。自分以外に視える人間と初めて出会った三角は、できることがあるならと積極的に関わっていく。

 同じように霊を退治する漫画として思いつくのは『BLEACH』や『地獄先生ぬ~べ~』だが、一方は死神代行で、一方は鬼の手を持っている。悪霊と化した霊魂を大きな剣や鬼の手で派手に退治しているイメージがある。しかし今作で行われる除霊は、能力のある生身の人間である冷川が、素質の豊富な生身の人間である三角の“核心”に触れ、まだ人間の形をしている霊たちをつかみぶん投げることで退治する。

 その“核心”に触れる瞬間が三角いわくキモチイイらしく、二人が除霊する様はエロティックでもある。漫画的な派手な除霊方法というよりは、曖昧で定まらないこのやり方のほうがむしろホンモノっぽく現実的に感じる。

 また主人公らが住む「いる」世界と普通の人間が住む「いない」世界の表現が実にリアルである。1コマ目には「いない」のに次の瞬間のコマには端っこに「いる」、読者の目の動きに合わせるように念を押すように絶対に「いる」。だんだんその存在に気付いていく過程にゾッとする。ワアッと驚かされるよりもじわじわと、異臭に気が付くときのように確実に、その世界を実感させられる。「いる」世界も「いない」世界も作品の中で表現されているからより、リアリティをもつ。

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