岡田将生×志尊淳の“除霊”シーンはどうなる? ヤマシタトモコ『さんかく窓の外側は夜』は新感覚の“除霊”漫画

ヤマシタトモコ『さんかく窓の外側は夜』評

 さらに、ヤマシタトモコの魅力はキャラクターの人間味にある。様々なキャラクターのそれぞれに、成育歴が透けてみえるほどしっかりとしたキャラ設定がある。主人公である冷川のミステリアスさの起因は実は想像もできない過去であり、それがわかるまでに読者が彼に抱く違和感がまた絶妙である。浮世離れした冷川の言動や行動が恐ろしいルーツによるものだと気が付くとき、この作品がただのホラー漫画ではないことを知る。

 また、冷川と比較して常識人として描かれるもう一人の主人公三角にも、なぜ霊を視るのか、人物の根幹に驚くべき事実がある。今後それが物語に関わっていくようだ。

 物語は除霊だけではなく、“呪い”を中心にして進んでいく。悪の存在として登場する女子高生の非浦英莉可は、ある人物に利用され死霊使い(ネクロマンサー)として無作為に人を呪っていたが、三角に出会ったことにより性質を変えていく。現実味のない“呪い”という現象が、宗教団体や警察などの現実世界が関わることによって実にリアルに描かれ、人間の弱い部分やよどんだ部分、“信じるということ”のもろさを利用して広がる様を描く。

 すでに第7巻まで出ているが、それまでの内容もさることながら、これからの展開もまだまだ謎だらけで目が離せない内容となっている。状来の“除霊”漫画よりも現代的に人間らしく描かれた今作品だからこそ、映像化でも今までにはない恐ろしさや生々しさを感じさせられるだろう。

 ヤマシタトモコの描く、「いる」世界をぜひ体験してもらいたい。

(文=菊池彩)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「書評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる