アラフィフ俳優たちが放つ“円熟のオーラ” 上川隆也、及川光博らが体現する大人の魅力
若い頃からドラマや映画で活躍している俳優たちは、年齢を重ねてもなお、変わらずに輝きを放っている。しかし、その輝き方は次第に変化している。若い頃には二枚目俳優としてもてはやされていても、50代となった現在では経験や見た目の変化が重なり、深みのあるかっこよさがにじみ出ているのだ。
本稿では、大人の色気を放つ50代俳優を紹介したい。
上川隆也
まずは、現在放送中の水10ドラマ『問題物件』(フジテレビ系)で主演を務めている上川隆也。1989年に演劇集団キャラメルボックスに入団すると、1995年にはNHKドラマ『大地の子』で主人公・陸一心役に抜擢され、第4回橋田賞新人賞を受賞、1997年には映画『東京夜曲』では第21回日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞するなど、演技派俳優として大きな注目を集めた。
上川の代表作とは何か。考えれば考えるだけ、頭の中には多くの作品が浮かんでくる。だが、きっと真っ先に挙げられるのは、『遺留捜査』シリーズ(テレビ朝日系)ではないだろうか。2011年にスタートした同作は、これまでに第7シリーズまで放送されており、不定期でスペシャルドラマも制作されている息の長いシリーズだ。上川演じる京都府警捜査一課特別捜査対策室の糸村聡が、事件現場に残された遺留品を手がかりに、事件の真相を解き明かしていく物語。糸村が持つ、優しさとマイペースさの二面性が面白く、上川の人間としての深みのある演技に惹き込まれる。
上川は万人受けするタイプではないかもしれないが、自然と目を向けてしまう魅力がある。その唯一無二の色気が際立った役が『エンジェル・ハート』(日本テレビ系)で演じた冴羽獠だろう。冴羽といえば、Tシャツの上に羽織る肩パット入りのジャケット姿とお調子者なその性格だが、再現が極めて難しいキャラクターを上川の確かな演技力で表現し、男女ウケするキャラクターを作り上げていた。
『問題物件』ではまた捉えどころのない謎の男・犬頭光太郎を演じているが、キャラクター性も相まって、上川の一挙手一投足がなんだか気になってしまう。内田理央が上川とどのような相性を見せるのかにも注目していきたい。
及川光博
及川光博もデビューした当時からは比べものにならないくらい、大人な色気を放つ俳優となっている。1996年に「モラリティー」で歌手デビューを果たしたことで芸能界へと進出した及川は、「僕、ミッチー!」と陽気に挨拶する独特なスタイルで人気を博した。1998年に放送された『WITH LOVE』(フジテレビ系)から俳優としても活動し、NHK大河ドラマ『利家とまつ』『龍馬伝』『八重の桜』をはじめ、『白い巨塔』(フジテレビ系)や『相棒』(テレビ朝日系)、『半沢直樹』(TBS系)といった社会現象となったドラマに出演し、俳優としての知名度を大きく上げた。
その中でも代表作と言えるのが『相棒』だ。警視庁特命係・杉下右京(水谷豊)の二代目相棒として神戸尊を演じた及川は、推薦組を経て警察庁に入庁したエリートということもあり、クールで自信家なキャラクター。神戸の気品溢れる佇まいは、まさに及川にぴったりだった。『半沢直樹』では、半沢(堺雅人)の同期で彼を陰ながらサポートする渡真利忍役を演じた。誰もが出世したいと望む血みどろな世界の中で、渡真利だけは人とのつながりを大切にしている。脇役ではあるが、ファンからの人気の高いキャラクターであり、それは及川の安定した演技があってこそだろう。
一方で、『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)では、これまで引き受けてきたキャラクターとは異なる役で新たな引き出しを見せてくれた。及川が演じた朝鳴肇は、妻とは別居中の明るくラテンな昭和のおじさんであり、人事部部長という役職。精神科医の富近(江口のりこ)との穏やかな恋愛模様はいつまでも見ていたい心地よさがあった。
この冬は松坂桃李が主演を務める『御上先生』(TBS系)に文科省初等中等教育局局長の塚田幸村役で出演中なのだが、今回もいい味を出しているので、ぜひ観てみてほしい。