『葬送のフリーレン』の物語になぜ共感? コロナ禍を感じる“思い出”の鋭い描写

『葬送のフリーレン』の物語になぜ共感?

成長した子どもと“その場にいなかった”自分

 人との面会が制限されていたコロナ禍を過ぎ、久しぶりに再会した友人や親戚の子どもの変化に驚いた人も多いのではないだろうか。

 アニメ第3話では、かつて自分のスカートをめくった「クソガキ」とフリーレンが再会する場面が描かれる。老人となったクソガキはフリーレンをすぐ認識したが、フリーレンは最後の別れの際に彼がクソガキと同一人物だと気づいた。

 自分が目の前にいるにもかかわらず、老人に「ヒンメル様の言葉を信じて待ったかいがあった」と呟かれたフリーレンは、おそらく寂しかったのだろう。帰りの馬車で「この村の人たちはヒンメルを信じていた」とフェルンに対してぼやく。

 コロナ禍に限らず、残業の多い親が幼い子どもと他人行儀になったり、同窓会で数年ぶりに会った友人と距離が空いたりすることは多い。そして、お互いに気まずさや寂しさを感じるのもよくある話だ。

 ヒンメルが逝き人間の心が少しわかるようになったフリーレンも、その村を再度訪れず、成長していく村の人たちと親しくしまなかったことを後悔したのかもしれない。彼女が見せたそんな悔いや空虚感も、私たちがフリーレンに共感して好意を抱く点なのだろう。

 人知を超えたエルフでありながら、人間と同じように弱く、もろくて儚い思い出を大切にするフリーレン。私たちは「人と会えない」コロナ禍を経験したからこそ、千年以上生きる彼女の感情に共感できたのかもしれない。

■放送情報
『葬送のフリーレン』
日本テレビ系「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」枠にて、毎週金曜23:00〜放送
キャスト:種﨑敦美、市ノ瀬加那、小林千晃、岡本信彦、東地宏樹、上田燿司
原作:山田鐘人、アベツカサ『葬送のフリーレン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
監督:斎藤圭一郎
シリーズ構成:鈴木智尋
キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子
コンセプトアート:吉岡誠子
魔物デザイン:原科大樹
アクションディレクター:岩澤亨
美術監督:高木佐和子
美術設定:杉山晋史
色彩設計:大野春恵
3DCGディレクター:廣住茂徳
撮影監督:伏原あかね
編集:木村佳史子
音響監督:はたしょう二
音楽:Evan Call
アニメーション制作:マッドハウス
OPテーマ:YOASOBI「勇者」
EDテーマ:milet「Anytime Anywhere」
©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
公式サイト:https://frieren-anime.jp
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/Anime_Frieren

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