『呪術廻戦』なぜ宿儺は伏黒恵に固執するのか 『日本書紀』に登場する“モデル”との共通項
甚爾があの場から恵を飛ばしたおかげで、恵は漏瑚に燃やされずに済んだ。だからといって、彼が自分の息子を救ったわけではない。依然として次の標的として捉えられている。あの冗談みたいで笑ってしまうような陀艮との戦いで発揮した力を恵に向けるのか。恵を息子だと認識することができるのか、注目していただきたい。
その一方では漏瑚と宿儺の手合わせが始まる。漏瑚はこれまで五条悟としか戦っていないため、なんだかコメディリリーフのような存在として扱われてきた。だからこそ、彼の本当の実力をあのように描くことでよりショッキングに、インパクトを残すことに成功している。それでも、五条の相手が終わったら今度は宿儺と、“最強”の相手ばかりさせられる漏瑚が少し不憫に思えてしまう。
余談にはなるが両面宿儺にはモデルがあり、実際に「日本書紀」に同名が登場していた。体は一つなのに、顔が二つあってそれぞれ反対方向を見ている。それぞれに手足があり、四本の手で武器を使う。仁徳天皇に従わず、人民から略奪をして楽しんでいたと記されている。飛騨の地方の豪族であり、戦闘能力に非常に長けている彼は天皇から遣わされた難波根子武振熊に成敗された。概ね、『呪術廻戦』での宿儺像と重なる部分も多い。しかしこの日本書紀の記述に対し、宿儺のいた飛騨地方には彼を“信仰の対象”とする話もあるのだ。
高山市の丹生川町日面にある普門山善久寺には、両面宿儺に関する書物「両面宿儺出現記」が遺されているという。そこには、宿儺が「日本書紀」と同じように二面四手四股の見た目だったことが記されているが、身長6メートルという巨大な彼の姿を見て驚いた畑仕事中の村人に「恐ることはない」と声をかけ、自分が“仏法の守護のためにこの世に出現し、現世に奉仕する者”だと自己紹介をしたと書かれている。そして彼にひれ伏した村人の前で十一面観音となったというのだ。『呪術廻戦』の両面宿儺とは打って変わって“いい人そう”である。確かに神のような信仰の対象は時にして怖かったり、恐れられたりするもの。見方や出会い方などの体験によって異なる存在に捉えられている点はなかなか面白く、もしかすると『呪術廻戦』における宿儺のキャラクター性にもそういった二面性が潜んでいるかもしれない。
ちなみに、高山市にあるビール醸造所「地ビール飛騨」には彼の名前にちなんだ「宿儺麦酒」なるクラフトビールも販売されている。カラメル麦芽が使われているブラウンエールで、めちゃくちゃ風味が香ばしく、飲みやすいけど後味の深みがクセになる一品。とても美味しかった思い出があるので、興味のある方はぜひトライしてほしい。
■放送情報
TVアニメ『呪術廻戦』第2期
MBS/TBS系にて、毎週木曜23:56~放送
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、中村悠一、島﨑信長、櫻井孝宏、諏訪部順一、三瓶由布子
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史、小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
「渋谷事変」オープニングテーマ:King Gnu「SPECIALZ」(Sony Music Labels)
「渋谷事変」エンディングテーマ:羊文学「more than words」(F.C.L.S./Sony Music Labels)
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp