老若男女がロボットアニメに夢中になった! 『魔神英雄伝ワタル』が長く愛され続ける理由

『魔神英雄伝ワタル』が長く愛され続ける理由

 1970年代、『マジンガーZ』がロボットアニメというジャンルを切り開き、『機動戦士ガンダム』や『装甲騎兵ボトムズ』などの作品が戦争のある世界をリアル志向で描き続け、アニメ界に大きな影響力を与えることとなった。それは、ロボットアニメというジャンルが、人間や世界の深さに迫るドラマを描けることを証明したわけだが、同時にやや子どもには難しい内容にもなりがちだった。

 そんな中、1988年から89年にかけて放送された『魔神英雄伝ワタル』は、異彩を放つロボットアニメだったと言える。3頭身のずんぐりした喋るロボットと少年が異世界を冒険するその内容は、戦争の虚しさや人の死を描くのではなく、純粋な冒険心をくすぐる内容で子どもたちの心を捉え、大ヒットを記録した。2025年にもシリーズ新作『魔神創造伝ワタル』が発表され、2013年・2014年に発売されたシリーズの原点である1作目と、1990年から1991年にかけて放送された続編Blu-ray BOXのスペシャルプライス版が新たに3月26日に発売されるなど、長く愛されるシリーズとなっている。

 本稿では、この『ワタル』シリーズが長く愛され続けている理由を改めて振り返ってみたい。

 『ワタル』シリーズは、『機動戦士ガンダム』で知られるサンライズが制作している。サンライズと言えば『ガンダム』シリーズなどの重厚な大河ドラマのようなストーリー展開で知られるアニメを生み出したことで知られているが、『ワタル』はそれらとは一線を画す、小学校くらいの子どもたちに向けた、快活な冒険ファンタジーを志向している。

 主人公は、元気いっぱいな小学生男子、戦部ワタル。図工の授業で粘土のロボットを作った帰り道、近所の龍神池に立ち寄ると、突如龍が現れ、異世界の神部界へと召喚されてしまう。神部界には創界山という由緒正しき山があり、七色の虹がかかる美しい場所だったが、悪の帝王ドアクダーによって支配されて以来、虹は色を失い、民は困窮していた。この世界には「ワタル」という名前の勇者が世界を救うという言い伝えがあり、ワタルはその救世主と目され、創界山を救う使命を背負うことになる。そして、ワタルは魔神(ましん)と呼ばれるロボット龍神丸とともに、7つの階層に別れた創界山をドアクダーから解放するための冒険へと出発するのだ。

 龍神丸は、ワタルが図工の粘土で作ったロボットが命を宿したものだ。三頭身のデフォルメされた親しみやすいデザインで、相棒としてワタルの冒険を支える。そして、道中、幼い少女ながら忍者集団「忍部一族」の頭領・忍部ヒミコや、先生と慕う剣部シバラク、鳥の姿をした渡部クラマなど仲間たちと出会い、力を合わせて悪の軍団と戦い、人々を助けていく。勧善懲悪のわかりやすい価値観、各階層のボスを倒して、ステージをクリアするように進むわかりやすいストーリー、個性的な悪役たちとのユニークなバトルに多くのギャグ要素など、ロボットだけでなく、子どもたちの心をワクワクさせるあらゆる要素を詰め込んでいたのが、『ワタル』が愛された理由だ。

 そんな本作の人気を支えていたのは、魅力的なキャラクターたちだ。主人公のワタルは、ローラースケートを得意とする少年。持ち前の明るさと勇気で、困難に立ち向かっていく姿は、子どもたちの「こうありたい姿」という気持ちを体現する存在だった。また年相応に女の子を意識したり、時には弱音を吐くこともあるが、正義を貫く快活な主人公像は多くの子どもたちの共感を呼んだ。

 その相棒であるヒミコは、いつでも笑顔で元気な女の子。どんなピンチに陥ってもそれを楽しんでしまう、ワタル以上に前向きな性格で、そのせいでトラブルを呼び込むこともあるが、さまざまな忍法で局面を打開する頼もしい仲間でもある。番組中盤では、視聴者から公募された忍法を披露するという展開もあった。

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