北村有起哉と緒形直人の共通点とは? 『おむすび』を支える“イケオジコンビ”の頼もしさ

2024年9月から放送が続いてきた朝ドラ『おむすび』(NHK総合)も、物語はいよいよ佳境へ。ヒロイン・米田結(橋本環奈)は自分らしさを貫く“ギャルマインド”で、多くの人々に笑顔を与えてきた。そんな物語の中心に再び立ちはじめたのが父の聖人(北村有起哉)だ。この第20週は、彼の主役回となりそうである。肩を組むのは、古くからの友人である“ナベさん”こと渡辺孝雄(緒形直人)。“イケオジ”なコンビである。

本作は、平成元年生まれの結が栄養士として、「食」をとおして人々と未来を結んでいく青春グラフィティだ。物語は福岡の糸島からスタートしたが、1995年に阪神・淡路大震災が起こるまで米田一家が暮らしていた兵庫の神戸が、現在の主な舞台となっている(結が働いているのは大阪の「新淀川記念病院」だが)。聖人は「さくら通り商店街」で理容師として「ヘアサロンヨネダ」を営み、同じく商店街で「渡辺靴店」を経営していた靴職人である孝雄は一念発起して東京へ。それぞれ別の道を歩んできたし、いまもそれぞれの道を歩んでいる。

聖人は震災によって大切な店を失ったが、家族はみんな無事だった。しかし、孝雄は愛するひとり娘を失ってしまった。ともに被災したことに変わりはないが、苦しみや胸の痛みは共有できない。あれからそれなりに時間が経っても、孝雄は心を閉ざしたままで、明るさを取り戻した商店街の人々の中でも孤立し続けていたのだ。聖人は特別に明るい人物ではないが、彼らを演じる北村と緒形の演技は対照的だった。「さくら通り商店街」で暮らす人々を演じているのは個性豊かな俳優陣だが、その中でもふたりの存在は際立ち、“神戸パート”に強度を与えてきたと思う。

そしてまた時が経ち、聖人と孝雄は再会。わだかまりがあったあの頃とは違う。聖人は多くの者たちから愛される人気理容師だし、孝雄は売れっ子シューズデザイナーである。“あの頃”はともに渋い演技を展開していたが、いまは非常にポップなパフォーマンスを繰り広げているところ。さすがは豊かなキャリアを誇る演技者だ。シーンやキャラクターの心模様の変化に合わせて、その演技のトーンも胆大心小、鮮やかに変化させてみせている。「俳優」という存在を、アーティストにして職人であり、アスリートでもあると捉えている私からすると、北村と緒形はまさにそのような俳優像の体現者だといえるのだ。