『御上先生』で圧倒的なパフォーマンス披露 影山優佳は同世代俳優の中でも際立った存在に

影山優佳が驚くほど優れた演技者なのだと、いま誰もが思っているのではないだろうか。あるいは、これまで彼女のことを“元アイドル”だとばかり認識していた人々は、その認識を改める機会が訪れているのではないだろうか。そう、放送中のドラマ『御上先生』(TBS系)における彼女のパフォーマンスを目の当たりにして、である。彼女と同世代の才能ある者たちが勢揃いしている作品だが、その中でも影山は存在は際立っているのだ。
日曜劇場『御上先生』とは、まったく新しい学園ドラマである。松坂桃李が演じる主人公・御上孝は、文部科学省のエリート官僚にして教師。官僚派遣制度により、名門校・隣徳学院の3年生の担任を務めることになったのだ。これは左遷だともいえるが、まるで眠れる獅子が眼を覚ましたかのように彼は立ち上がった。日本の教育現場を侵す腐敗した権力に、いま生徒たちとともに挑んでいるところなのである。

そんな本作で影山が演じている倉吉由芽は、アメリカで生まれ育った帰国子女だ。高校入学のタイミングで帰国し、はじめて日本の学校に通うことになったらしい。つまりはバイリンガルなわけだが、故郷であるアメリカでの日常生活では当然ながら英語を用いていたはず。この倉吉由芽という人物の“これまで”を、影山は見事に体現してみせている。
第4話で彼女が展開した演技には圧倒されたものだ。それまではあくまでもクラスの一員をまっとうするポジションに収まっていたが、一気に主役の座に躍り出てみせた。御上が生徒たちの前で倉吉に投げかけた問いに答える一連のシーンでだ。ここで扱われていた話題は非常にセンシティブなもの。そこで彼女は丁寧に絞り出すように、自身の考えを、自分の言葉として口にした。

先述したようにバイリンガルである倉吉は、長いアメリカ生活では英語を常用していたはず。彼女の日本語の発音には、海外で長く生活をしてきた者特有の訛りがあった。それも、あからさまにカタコトで発音したりするものなどではない。彼女の話す言葉には、非常に自然なかたちで彼女の“これまで”が感じられた。“これまで”とは何かというと、日本とは大きく異なる文化で過ごしてきたであろう時間のことである。影山はこれを、自身が発する一連のセリフに滲ませてみせたのである。
これは相当に匙加減の難しいパフォーマンスだったのではないかと思う。倉吉由芽という人間の中にある激しい心の動きを大切にしつつ、発語に関しては技術によって慎重にコントロールしなければならなかったはず。このどちらかに比重が傾いてしまうと、もういっぽうがおざなりになってしまいかねない。影山は繊細にバランスを保ちつつ難しいシーンをやりきり、素晴らしいシーンに仕上げてみせた。お茶の間の私たちにはもちろんだが、実際の撮影現場でも驚きと興奮を生み出したのではないだろうか。