まるで『ヴィンチェンツォ』? 『ボゴタ:彷徨いの地』ソン・ジュンギの華と魅力を再確認

『ボゴタ:彷徨いの地』ソン・ジュンギの魅力

 Netflixで2月4日より配信中のソン・ジュンギ主演の韓国映画『ボゴタ:彷徨いの地』が、世界配信からわずか1日でNetflixグローバルランキング1位となり、世界73カ国でトップ10入りする大ヒットを記録している。

 本作は、2020年1月の撮影開始から世界的パンデミックによる撮影延期を経て、2024年12月31日の韓国公開まで、実に4年の月日がかかった作品だ。さらに、公開日の1週間前にはヒョンビン主演の『ハルビン』が封切られ大ヒットを飛ばす中、公開日の2日前にムアン(務安)国際空港でチェジュ航空旅客機事故が発生。国家哀悼期間の中での公開となり、舞台挨拶などのプロモーション活動も中止され、期待されていたほどの興行成績が伸びずに劇場公開が終了となった経緯がある。しかし、12月31日から2カ月も経たぬ2月4日にNetflixで世界配信されるやいなや、再生回数1300万と圧倒的な強さで初登場にしてグローバルランキング1位の座に着いた。日本ランキングも配信後より2位の座に君臨中だ。“信じて観る俳優”と呼ばれるソン・ジュンギの世界的人気を堂々と知らしめたのである。

 ソン・ジュンギは、2021年『ヴィンチェンツォ』での無双マフィア弁護士ヴィンチェンツォ・カサノ役、2022年『財閥家の末息子~Reborn Rich~』でのチン・ドジュン/ユン・ヒョヌ役とドラマで大ヒットを飛ばし、人生キャラクターを更新中。一方、映画は2020年の『スペース・スウィーパーズ』での宇宙船「勝利号」の操縦士キム・テホ役の明るくカッコいいキャラクターを最後に、『このろくでもない世界で』のチゴン、『ロ・ギワン』の脱北者ロ・ギワン、本作『ボゴタ:彷徨いの地』のソン・クッキ役と、シリアスでハードなキャラクターへの挑戦が続いている。

 本作は、韓国で戦後最大の経済危機となった1997年のアジア通貨危機、通称IMF危機により、成功を夢見てコロンビアの首都ボゴタへ移住した男が成り上がっていく物語だ。1985年生まれで2025年に40歳になるソン・ジュンギが画面に最初に登場するのは、なんと19歳のソン・クッキとしてだ。乙女のような無造作なマッシュカットにピュアなあどけなさを感じさせ、かわいさを醸し出すソン・ジュンギは、やはり人を魅了する天性の華と魅力がある。この19歳の青年クッキは、ボゴタに着いた早々、強烈な洗礼を受ける。

 クッキは、IMF危機で破産した父グンテ(キム・ジョンス)と母(キム・ホジョン)と共に、アメリカに行くためにまずコロンビアの首都ボゴタに家族と一緒に移住をする。「ここには長居しない」「ここはアメリカに行くための料金所だと思おう」というグンテの当初の目論見は大きく道を外れて、思いもよらぬ人生へと飲み込まれていく。

 グンテ一家は、戦友であるボゴタの韓人会会長パク兵長(クォン・ヘヒョ)を頼り、彼の下でクッキは働くことになる。パク兵長は、韓国から買ってきた下着を売って成功し、今は密輸業のトップに君臨し、コロンビア人の中でも権力を持っていた。パク兵長は仏教を信心しており、「六道」の話をクッキに聞かせる。

 仏教の六道とは、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上の6つの世界を指し、生きとし生けるものは前世の行いによって来世が決まるという教えだ。それをパク兵長はボゴタに例えてクッキに話して聞かせる。「衆生は前世の行いによって地の果てから天空まで6つの道を巡るんだ。この国はそれを体現してる」「ここは6区だ、金持ちの街だよ」と言い、1区に住んでいるクッキに向けて「君は必ず生き延びおいて6区まで来るんだぞ」「上り詰めるには努力だけじゃかなわない」と告げる。パク兵長の言葉の通り、クッキは着々と闇世界でのし上がるために力をつけていく。希望のない人生を送っていたクッキが、パク兵長の言葉で生きる希望の灯がついたのだ。それがたとえ闇の中であっても、ラ・クラーチャ(この単語はぜひ映画を観てご自分の目で確かめてもらいたい)のように生き延びることがクッキの目標となる。クッキは、韓人会の密輸業のナンバー1のパク兵長と、ナンバー2のスヨン(イ・ヒジュン)の両方から見込まれて、どんどんと頭角を現していく。

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