アニメ『薬屋のひとりごと』をさらに楽しめる? 漫画版2種類の違いを検証

『薬屋のひとりごと』漫画版2種類の違いは?

 10月21日にTVアニメ第1話から第3話が放送された『薬屋のひとりごと』。猫猫(マオマオ)のストレートな物言いや壬氏(ジンシ)の端麗な顔立ち、鮮やかに解決される後宮の謎に夢中になった人も多いのではないだろうか。

 原作小説の内容をもとにした『薬屋のひとりごと』の漫画はなんと2種類。そのため、TVアニメや原作小説で『薬屋のひとりごと』の魅力に染まった人は「どちらの作品を読めばよいか分からない」といった問題に直面するかもしれない。

 本記事ではそのような方に向け、『薬屋のひとりごと』の漫画2種の違いとそれぞれの特徴をTVアニメや原作小説との比較を交えて紹介する。

色気と茶目っ気あふれる『ビッグガンガン』(スクエア・エニックス)

 ビッグガンガン版の『薬屋のひとりごと』は、2019年度に「次にくるマンガ大賞2019」を受賞した作品。サンデーGX版よりも約3カ月早い2017年の5月25日に連載が始まっている。

 最も特徴的なのは、一目で引き込まれる美しい作画だろう。端麗な描写で話題となった初回のアニメに近い画になっているため、アニメから本作にふれた人にはまずビッグガンガン版のコミックスをおすすめしたい。

 ただ、ビッグガンガン版の強みは作画だけではない。『薬屋のひとりごと』におけるラブコメ要素、特に「壬氏の色気」と「猫猫の自虐」の表現に関してはビッグガンガン版が非常に優れているのだ。

 まず、アニメでは第2話として描かれた「媚薬」エピソードの最後、猫猫にお礼を述べる壬氏の妖艶さはビックガンガン版がピカイチである。

 アニメのように壬氏が猫猫の首に唇を当て、耳元でお礼をささやいて上腕を撫でおろす……この画のみでも十分胸キュンできるのだが、ビックガンガン版は猫猫の首についた跡まで描かれ、「壬氏が本気で口をつけた」ことがわかる演出となっているのだ。

 しかも、アニメでは壬氏がその場から立ち去る姿が数秒の簡素な描写で終わる一方、ビッグガンガン版では丸々1ページを使って描かれる。このときの壬氏は舌なめずりをしており、さながら弱った獲物を味わう虎の子のよう。「お礼をささやく」場面と同じ、人によってはそれ以上に胸が高鳴るシーンとして、読者を美形の妖しげな魅力で惹きつける。

 ちなみに、サンデーGX版ではそもそも唇の描写がなく「壬氏が猫猫の首の後ろに指先を滑らせる」だけでシーンが終わるため、この壬氏の色気に興味をそそられる人はビッグガンガン版を手に取るべきだろう(指先を滑らせるのも、それはそれで妖艶であるが……)。

 また、猫猫の自虐によるコメディ色が強い点もビッグガンガン版の特徴だ。アニメ第1話の序盤で猫猫が「そばかす」「絶壁」「肉なし体系」と自らを揶揄する場面があるが、このテンポの良いたたみかけはビッグガンガン版のコミックスから継承されたものである。

 アニメを観て登場する女性たちのふっくらとした胸に目を引かれた人も多いかと思うが、豊かとは相反する猫猫の「絶壁」表現は、原作小説には存在していない。猫猫を演じる悠木碧の声によって表された猫猫の茶目っ気を、ビッグガンガン版の薬屋のひとりごとは紙面のみで見事に表現している。

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