『ダンジョン飯』『空挺ドラゴンズ』『異世界放浪メシ』 異世界飯テロアニメ人気の理由
異世界だろうとダンジョンだろうと、そこに生きる者がいるなら必ず食うメシが存在する。その材料が得体の知れないモンスターで、調理法が焼いて塩で味付けをするだけだったら、飽食にまみれた現代人の目にはあまり美味しいとは映らない。ところが、そんな心配を覆すように、異世界やダンジョンで美味しいメシを楽しむTVアニメがいくつも登場して、冒険心と空腹を誘って止まない。いったいどうして“異世界メシ”が美味しそうに見えるのか? どうしてこれほどまでに“異世界メシ”が流行るのか?
「マンガ大賞」にノミネートされること4度。受賞こそかなわなかったものの、高い人気を誇って今も続いている九井諒子の漫画『ダンジョン飯』が2024年1月から、待望のTVアニメとなって登場する。冒険者のライオスが、レッドドラゴンに食われた妹のファリンを救出するため再びダンジョンの奥を目指すが、出立を急ぐあまり食料を調達している時間がなかった。
そこでライオスが考えたのが、ダンジョン内での食料調達。とりあえず捕まえた歩き茸と大サソリを食おうとするが、歩き茸には味がなさそうで大サソリもどこか不味そう。何より不気味で食べるのを嫌がるパーティメンバーもいた。そこに現れたドワーフのセンシが、長く探求してきた魔物の食い方を教え、そのまま冒険に同行する。
これから始まるTVアニメの視聴者のために、センシが魔物をどう調理するかは具体的には触れずにおくが、魔物にも美味い部位と不味い部位があって選り分ける必要があることや、そのまま食べずに煮込んで出汁をとったり、焼く時にも薬草を詰め物にして味付けをしたりすることで、一段と美味くなることだけは言っておこう。つまりは現実と同じで、手間をかければかけただけ、料理は美味くなるものなのだ。
桑原太矩の漫画を原作にしたTVアニメ『空挺ドラゴンズ』にもそんな、手間を掛けて調理されるモンスターの料理が登場しては、どれも美味そうに見えて空いたお腹を刺激してくれた。龍と呼ばれる生物が空に棲んでいる世界が舞台のファンタジーで、龍は肉も油も骨も高値で売れることから、空に浮かぶ船に乗って龍を狩る「龍捕り」たちが活動していた。現実世界でいう鯨と捕鯨船に似た関係だ。
メインとなるのは、主人公で優れた捕龍技術を持つミカや新米女性隊員のタキタら、捕龍船のクイン・ザザ号に載る龍捕りたちが、どのような思いを抱えながら龍に挑むのかといったストーリーだが、これに絡むように、龍をどれだけ美味く食うかといった料理の場面も描かれる。牛のステーキと同じで、焼くだけでも相当に美味しい龍の肉を、ミカは焼きながらグラッパを垂らし、スライスしたものを龍の油で焼いたパンに挟んでステーキサンドに仕立て上げた。
「これは絶対美味しいヤツだ」とタキタが言うように、美味しさが画面から伝わってくる料理だった。小さい龍を開いてレモン汁や塩コショウで味付けし、フライパンで揚げ焼した悪魔風に仕立てあげたものも、テレビ画面越しに匂いが漂ってくるようだった。焼くだけではない。低温の油で煮込んだ龍のカラギモを潰したイモで挟み、酢キャベツでおおって固めたテリーヌや、さまざまな部位の龍の肉をタマネギやパプリカ、トマト、そして水などで煮込んだ釜煮など、手間をかけた龍の料理からもしっかりと美味しさが伝わってきた。
龍を牛やチキンなどに置き換えれば、家でも試すことができそうな調理法。というよりは、サソリならエビやカニ、龍なら牛やチキンといった具合に、異世界の魔物や龍に現実世界の食材を当てはめ、それらの調理法を施しているからしっかりと食べられるものに仕上がっているとも言える。これは、江口連の小説を原作にしたTVアニメ『とんでもスキルで異世界放浪メシ』でも取り入れられている手法だ。