『ブギウギ』はなぜ“だらしない”人を描く? 理路整然としない朝ドラだからこその強み

『ブギウギ』はなぜ“だらしない”人を描く?

 梅吉は、脚本家を目指しながらも芽が出ず、髪結いの亭主のように、銭湯の亭主に収まって、のんきにやっている。時々夫婦の営みを求める梅吉にツヤは拒否してばかりだけれど、それでも好きなのは、いったいなぜ? ツヤの口から、梅吉のなにがいいかは出てこない。「おなごの意地」で片付けられ、理屈ではない本能みたいなものとして、言葉で説明せず、ただ、寄り添っている姿を描き続ける。

 第20話では、お金持ちの次郎丸(石倉三郎)がお金にものを言わせてスズ子に踊らせようとしたり、お酌をさせようとしたり。昨今、かなり忌み嫌われる行為をしていた。でも、この共同体ではそれがゆるされ、スズ子も怒らず粛々と受け入れる。令和のドラマとしては気になる描き方であるし、不快感を覚える人もいるだろう。

 女性や、芸能を行う者の価値をリスペクトしない時代に沿って描いたものなのか、令和のいまだって、こういう価値観をもった人もまだまだいるという意味の描写であろうか。でもここの次郎丸が、スズ子が拒否しなかったせいもあるのか、すごくいやな人には見えなくて、複雑な気持ちで筆者は観た。次郎丸も、こういう次郎丸が好き、と思ってくれる人がいるのだろうか。次郎丸の振る舞いに妻は忸怩たる思いを抱いていないだろうか。若干、妻が毒づいているふうなところも感じられたが。

 笠置シヅ子の生い立ちは、富農の跡取りが女中との不適切な関係で生まれた子供ということで、これこそ男性による身勝手を物語る出来事である。次郎丸家の法事に、スズ子の母親らしきキヌ(中越典子)がいたけれど、なぜ、彼女がいまここにいるのだろうと、第5週が気になる構成になっているのはうまさではある。はたして、どんなひとでも愛されるところはあるものなのか、それとも、だめなものはだめ、いやなものはいやなのか。この論争は果てしない。

 話がうーんっと逸れてしまったが、雛鳥が親鳥の羽で守られるように大事にされてきたスズ子が人生、きれいなことばかりではないと知ることが、巣立ちのきっかけになるのだろう。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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