『進撃の巨人』『まどマギ』『キルラキル』など、10年経っても支持され続けるアニメに迫る

『進撃の巨人』など10周年アニメを振り返る

 TVアニメ『進撃の巨人』も放送開始から10年を経て、10月29日に前編(再放送)、11月5日に「The Final Season完結編」後編が放送される。同様にTVアニメ『キルラキル』が10月4日に放送開始10周年を迎え、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』も公開から10年を経て、待望の続編『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』の制作が9月に発表された。毎年大量の作品が放送や上映される中で、10年を“一昔”としないで支持され続けるアニメには、いったい何があるのか。

TVアニメ「進撃の巨人」The Final Season完結編(後編)PV第1弾

 『サザエさん』や『ONE PIECE』といったご長寿アニメとは違って、オリジナルとして登場しながら息長く続くアニメ作品が増えている。2012年の放送開始から11年が経った『ガールズ&パンツァー』は、最終章の第4話が劇場で上映されて連日賑わいを見せている。同じく2012年放送開始の『PSYCHO-PASS』シリーズも、新作映画『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』が作られた。

 『ガルパン』も『PSYCHO-PASS』も、シリーズが作られ続けていることが10年以上も支持を集めている背景にありそう。裏返せば、支持があるからシリーズが作り続けられているともいえる。この9月まで放送された『幻日のヨハネ -Unpolarized Reflexion-』も、2013年放送の『ラブライブ!』から続く『ラブライブ!シリーズ』のひとつ。学園の所属する少女たちがアイドルとなって歌い、競い合う展開に熱い支持が集まり『ラブライブ!』『ラブライブ!サンシャイン!!』『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』などのシリーズが作られた。

『ラブライブ!』シリーズが長く愛される理由とは? μ'sの成長描いた第1作を解説

いまから11年前、『電撃G's magazine』2010年8月号が異常なまでの売り上げを飛ばしていたことを覚えている方はいるだ…

 アニメのアイドルを演じる声優たちが、現実のライブに登場してアニメと同じ衣装や振り付けで歌うライブも開催。アニメから抜け出たような世界を見られる仕掛けが放送終了後もファンを離さず引き寄せ続ける。同じ仕掛けにバンド要素を取り入れた『BanG Dream!』を後発として生み、『ラブライブ!シリーズ』を仕掛けた平山理志プロデューサー自身が、東映アニメーションに移りアニメ『ガールズバンドクライ』プロジェクトを立ち上げた。作品への支持が10年を経てひとつのジャンルを生み出した。

 『キルラキル』の場合は、TVアニメ自体は全25話で完結し、続編も劇場版も作られていない。それでも、10年の節目に話題になるのは、作品から繰り出された衝撃が、観た人の記憶に深く刻まれ忘れがたいものとなっていることがあるからだ。

 父の仇を探しに本能字学園へと乗り込んだ纏流子という名の女子高生が、一度は退けられながらも喋る黒いセーラー服「鮮血」を身につけたことで覚醒し、生徒会長の鬼龍院皐月を頂点とする本能字学園の勢力と戦って次々に打ち破っていく。

 池上遼一の『男組』や本宮ひろ志の『男一匹ガキ大将』といった往年の番長漫画を思い起こさせる泥くさい展開に、不思議な繊維で織られた服が異能を与えるSF的な設定が絡んだストーリーを、パワフルでスピーディーなアニメーションによって見せる。そんな力業によって『キルラキル』はすぐさま評判を獲得した。

 制作したトリガーは、『新世紀エヴァンゲリオン』で知られるガイナックスで『天元突破グレンラガン』(以下、『グレンラガン』)を手掛けた今石洋之と大塚雅彦、舛本和也が立ち上げた会社だ。そこが送り出す作品ということで、『キルラキル』にも『グレンラガン』のような熱いバトルとエスカレートしていく展開が期待された。

 原作・脚本も『グレンラガン』と同じ中島かずきが担当。これで面白くならないはずがないという期待の上を行くアクションと展開で、『キルラキル』はアニメファンの視線を釘付けにした。決して流子と皐月のバトルシーンでの際どい服装だけではない。

 放送が終わった後も、秋葉原にある東京アニメセンターでアニメスタジオ・TRIGGERとしてのイベントが開かれ、原画が展示されたりグッズが売り出されたりして賑わったが、最近はあまり名前が挙がっていなかった。TRIGGER自体が『リトルウィッチアカデミア』『SSSS.GRIDMAN』『プロメア』といった話題作を次々に繰り出してきて、ファンに振り返る余裕を与えてくれないところもある。

 それでも、放送開始10周年が話題になるくらいに『キルラキル』のファンは今も大勢いて、何か新しいことが起こらないかと願っていることが分かった。記憶の奥へと押しやろうとしても、それを許さない作品力。『キルラキル』の場合はそれが、10年という歳月を易々と飛び越えさせた。

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