『進撃の巨人』『まどマギ』『キルラキル』など、10年経っても支持され続けるアニメに迫る
同じことは、『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズにも言えそうだ。2011年1月から3月までの放送予定が東日本大震災という未曽有の事態で放送延期となり、4月に終盤が放送された。それでも、魔法少女というある意味で少女たちの憧れの存在に、驚くような秘密が隠されていた逆転の構図に誰もが驚き、強く心に刻まれた。
ハッピーエンドとはいいづらい最終回に、救いはないのかといった反応が起こる中、2本の総集編を経て2013年に公開となった『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』。今度こそ皆が幸せになるのかと思いきや、そうした安楽を許さない虚淵玄の脚本が、凄絶な結末を見せてファンを絶望させた。これで終わっていいはずがないと、心の底で沸々と感情をたぎらせ続けるファンを生み出した。
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作品力に加えてファンを天国と地獄の間で振り回す展開が、『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズを10年なんて一瞬に過ぎないと思わせる作品にした。だからこそ、10年を経て発表された正統なる続編『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』に抱く期待には、絶大なものがある。そして同時に、虚淵玄のことだから別の絶望をぶつけてくるかもしれないという恐怖心も、巨大なものとなっている。その答え次第で、次の10年も一瞬にしたいファンが生まれそうだ。
その点で、『進撃の巨人』の「The Final Season完結編」を待つファンは、この10年を喜びの中で過ごし、幸せのうちに終えられると言えそうだ。本作には諫山創による漫画の原作があって、アニメはそのとおりに進んでいる。漫画の連載を追ったり、アニメから入ったりした人は、巨人に襲われ喰われる恐怖を味わい、絶対に勝てないという絶望を抱いたかもしれないが、それでもエレンやミカサをはじめとした調査兵団は戦いを続け、危機を乗り越えてきた。
大逆転した世界の構図にも驚かされたが、それでも物語は人類が次の段階へと向かう扉を示す形で進んでいった。「The Final Season完結編」の前後編では、そうした人類にとって最後となる巨人との戦いが描かれ、アニメとして10年つきあっていた物語の世界に終止符が打たれる。
その先があるかないかは、すべて原作者の諫山創にかかっている。綺麗に完結した漫画の続きは不要だが、それでも過去に続きが描かれた作品がない訳ではない。『キルラキル』や『魔法少女まどか☆マギカ』に倣って10年間、思い続けることで何かが動くなら、そうしたいという人も出てきそうだ。
むしろ可能性は、原作にアニメ化されていない部分が残っている作品にあるのかもしれない。一例が『はたらく魔王さま!』。和ヶ原聡司のライトノベルを原作に、2013年に第1期が制作されてから実に9年が経って第2期の1st Season、そして10年目に第2期の2nd Seasonが放送された。
橘公司が原作のTVアニメ『デート・ア・ライブ』も、2013年の第1期に始まって、2014年、2019年、2022年と4期にわたって放送され、さらに第5期の制作も決まっている。こうなると、2013年に放送された1期12話で終わってしまった『まおゆう魔王勇者』の再アニメ化を期待したくなる。
ただ、世間が騒ごうとも逆にスルーしようとも、好きだと思った作品を想い続けることの方が、その作品にとっては嬉しいことかもしれない。10年ということなら、2013年は『たまこまーけっと』『Free!』『境界の彼方』と、京都アニメーションのTVシリーズが3作品も放送された年だった。
『Free!』はTVシリーズが3期作られ、劇場版も5作目まで作られて今も人気だが、『たまこまーけっと』は翌年に映画『たまこラブストーリー』が公開されたきりで、『境界の彼方』も2015年に映画『劇場版 境界の彼方 -I’LL BE HERE-』の過去篇と未来篇が公開されて以降、一般の記憶では隅へと追いやられている。
それでも、『境界の彼方』は10月8日に過去篇と未来篇が連続上映されるイベントが開かれ、熱心なファンが集まった。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も手掛けた美術監督の故・渡邊美希子による繊細で心に染みる背景美術がスクリーンに蘇って、感嘆したファンも多かっただろう。
間に10年という歳月があっても、そして様々な出来事があってもその時に作られた作品の中に、携わった人たちの手の跡はしっかりと残っている。節目の年をきっかけに、タイムカプセルのように振り返って見ることでそうした跡を確かめ、作品への思い出を蘇らせ、同時に新しい発見をする楽しみ方も悪くはない。
だから、もっといろいろ探ってみよう、一昔前のアニメを。
■公開情報
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』
2024年冬公開
キャスト:悠木碧、斎藤千和、水橋かおり、喜多村英梨、野中藍、阿澄佳奈、加藤英美里
原作:Magica Quartet
総監督:新房昭之
脚本:虚淵玄
キャラクター原案:蒼樹うめ
監督:宮本幸裕
キャラクターデザイン:谷口淳一郎
異空間設計:劇団イヌカレー(泥犬)
音楽:梶浦由記
アニメーション制作:シャフト
©Magica Quartet/Aniplex・WR
公式サイト:https://www.madoka-magica.com/