『大奥』医療編はまるで『プロジェクトX』 2つの“人間ドラマ”が絡まり合う見事な構成に

『大奥』医療編はまるで『プロジェクトX』

 それぞれの“過去”に起因する、さまざまな思いが“現在”で交錯する。なるほど、それこそが“ドラマ”の醍醐味ではないか。やはり『大奥』は面白い。10月3日から放送がスタートしたNHKドラマ10『大奥』season2「医療編」は、ひとつの大きな“ドラマ”の中に、登場人物たちの過去に起因する2つの人間ドラマが複雑に絡まり合う、実に見事な構成になっている。

 今年の1月から3月にかけて放送されたSeason1では、男女逆転という大胆な発想のもと、実在した江戸時代の「大奥」をフィクショナルな説得力と現在にも通じる問題意識をもって描いてきた本作。そのSeason2「医療編」では、男女逆転の状況を作り出すそもそもの原因となった赤面疱瘡ーー若い男子のみが罹るという奇病に、真正面から立ち向かう人々の姿が描き出される。

『大奥』season2

 その中心となるのは、平賀源内(鈴木杏)だ。医薬を研究する本草学者であり、オランダ語を通じて西洋の学問を研究する蘭学者であり、その一方で通俗小説を著す戯作者として人気を博するなど、多才な人物として後世にも知られている平賀源内。本作においては、女性として生まれながらも、弟の死をきっかけに家を捨て、男の衣装を身につけ自由に生きることを選んだという“過去”を持つ源内は、第10代将軍・家治(高田夏帆)の側用人である田沼意次(松下奈緒)の命によって全国各地を渡り歩き、江戸から遥か遠く長崎の地で、オランダ語と医学に精通する混血児・吾作/青沼(村雨辰剛)と出会う。

 オランダ語の大通詞であり蘭方医でもある吉雄耕牛(飯田基祐)の優秀な弟子でありながらも、金髪碧眼というその容姿ゆえ、周囲の人々から疎んじられてきた“過去”を持つ彼は、「人々から素直に感謝されたい」という思いのもと、意を決して源内の申し出を受け入れ、江戸の大奥で蘭学教室を開くことになる。そんな彼の世話係としてつけられたのが、大奥の奉公人のひとりである黒木(玉置玲央)だった。医者の息子でありながらも、苦々しい“過去”の思いから、青沼という名前を与えられた吾作に向かって「私は医者も蘭学も嫌いです」と言い放つ黒木。それぞれの“過去”に起因する複雑な思いを胸に秘めたこの3人が、徐々に心を通わせ合いながら赤面疱瘡撲滅という大きな目標に向けて尽力する。それが、「医療編」の序盤を牽引する“人間ドラマ”だ。

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