『らんまん』ようやく報われた綾の想い 万太郎は“日本のマキシモヴィッチ”的立ち位置に
竹雄(志尊淳)と綾(佐久間由衣)が屋台を始めて、5年の月日が経った。NHK連続テレビ小説『らんまん』第117話では、2人をはじめとする登場人物らの現在が描かれる。
竹雄と綾の蕎麦を食べたいがために通う波多野(前原滉)は、教授として忙しくしているようだ。何かと田邊(要潤)の名前を出すのが印象的だが、それほどやはり彼は教授から多角的に影響を受けたのだろう。そんな彼のもとで、学生ではないが研究室に潜り込み、菌の研究をする藤丸(前原瑞樹)はまるで若き日の万太郎のようだ。熱を持って研究に挑み、竹雄と綾と交わした約束を果たそうとしている。そしてついに、2人に吉報が訪れた。農科大学に醸造の教授が誕生したのだ。
アルコールの発酵に酵母菌が関わっていること、日本酒にも清酒酵母が存在していて、そこから悪いものを取り除けば火落ちしなくなるのではないかという仮説。これらの現在わかっていることだけでも、綾にとっては十分だった。子供の頃からずっと聞こえてきた、酒蔵の雫の音。あの場所に惹かれ続け、嫌われ続けた。誰もが女である自分を“穢れ”と指差し、酒蔵の神様の機嫌を損ねると言われた。それでも誰よりも酒造り、峰屋を愛する気持ちが強かった綾は、最終的に火落ちを出してしまったこと、その原因がもしかしたら本当に“女の自分が酒造りに参加し、酒蔵に入り浸ったせいだったら”と心のどこかで悩み苦しんだ部分があっただろう。そんな彼女の想いと抱えてしまっていた罪悪感が、藤丸の言葉によって解かれていく。
「この先、根拠のない迷信は消え失せていく」
女子が蔵に立ち入ったらいけないなんて、もうそんなこと誰も言わなくなる。彼女の苦しみをずっと近くで見て感じてきた万太郎も、そうやって力強く姉を言葉で抱きしめた。