『らんまん』ようやく報われた綾の想い 万太郎は“日本のマキシモヴィッチ”的立ち位置に

『らんまん』立場が変わっていく登場人物たち

 藤丸が以前の万太郎の立ち位置にいれば、万太郎も以前の誰かの立ち位置にいる。子供たちもすっかり大きくなり、白髪が混じり始めていた彼は以前と比べて精神的に成熟した部分もあるが、どこかダウナーモードが続いている。寿恵子(浜辺美波)が茶屋で働き出し、自分の本領を発揮できる場所を見つけて生き生きとし始めたのに対し、これまで振り返らずに猪突猛進で植物学の道を歩んできた万太郎が少し不安を感じて立ち止まっていた前回。図鑑が完成間近になるにつれ、「これまで支えられてきた人に報いることができるのか」「多くの人の手に渡って愛されるのか」、そんなふうに悩んでいた。

 長屋に帰ってくると、助手の虎鉄(濱田龍臣)がせっせと作業をしている。彼の背中に、以前の自分を重ねたのだろう。自分には、いま周囲の人間が持つ、そしてかつての自分が持っていた“熱”がない。そんな気分に見える万太郎の元に届いたのは南方熊楠からの標本だった。

 “自分が名前をつけるから、送った標本が新種かどうか確認してほしい”、という趣旨の長い手紙の“熱”に当てられてテンションが上がる万太郎。虎鉄はその態度に苦手意識を持つが、万太郎はついに大学以外のところから植物学に熱を持つ人間が現れたことを喜ぶ。彼もついに、新種かどうか見極めるために標本を送られる立場になったのだ。かつての彼がロシアのマキシモヴィッチ博士にやっていたようなことを、今はされる側になっている。博士のように世界中から標本が届くわけではないので、“日本のマキシモヴィッチ的な立ち位置”と言うべきか。万太郎が植物学を始めた頃を振り返ってみると、感慨深いものがある。時間が経つにつれて登場人物の現在地が入れ替わり続ける『らんまん』の物語も、そろそろ終わりに近づいているみたいだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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