アニメの総集編やコンサートフィルムは閑散期のピンチヒッターから「映画」に

映画興行を支えるアニメ総集編などの「映画」

 先週末の動員ランキングは、『鬼滅の刃』のTVシリーズ第2期「遊郭編」の第10話・第11話と4月放送開始の第3期「刀鍛冶の里編」第1話を合わせて特別上映する『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』がオープニング3日間で動員81万3000人、興収11億5900万円をあげて初登場1位となった。オープニング成績だけを見ると圧倒的な強さだが、ウィークデイに入ると途端に落ち着いた数字になっていて、「放送に先駆けたエピソードを含むテレビシリーズの劇場上映」という特殊なフォーマットの作品だけになかなか先が読みづらい。通常の映画作品ならば、これだけのオープニング成績を稼ぎ出せば興収50億円突破は確実。第3期の放送が始まる4月には公開が終了すると見込まれているのはマイナス材料だが、その一方で入場者プレゼントやライブビューイングなどのイベントによる週末のドーピング的動員も考慮しなくてはいけない。

 長編映画とは別の、テレビシリーズの総集編を劇場上映するという企画では、最近では『名探偵コナン』シリーズの『名探偵コナン 緋色の不在証明』(2021年2月公開)や『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』(現在上映中)といった前例もあるが、それぞれ作品の細かい成り立ちも異なるため、単純な比較も難しい。というか、本連載は映画興行についてのコラムとはいえ、それらの作品を「映画」としてどう扱うべきなのか、きっとそこに正解はないのではないかとも思う。

 先週末にはもう一作品、「『映画』としてどう扱うべきなのか」と頭を悩ませる作品が上位にランクインした。初登場4位の『BTS: Yet To Come in Cinemas』だ。昨年10月に韓国・釜山で万博誘致のために行われたBTSのコンサートの模様を、当日の生配信では使用されなかったシネマティック専用カメラ14台による超接近ショットやフルショットや多彩なアングルで撮影した作品だ。2月1日(水)に公開された本作は、オープニング5日間で動員29万4913人、興収6億7706万7700円を記録。動員数と比較して興収が高いのは、特別料金2400円均一での興行となっているからだ。

 数年前までこうした特別料金興行のコンサートフィルム、あるいは演劇やオペラの上映やOVA作品の先行上映などは、非映画コンテンツ、あるいはODS(Other Digital Stuff)などと呼ばれ、日本映画製作者連盟(映連)の統計などでは通常の映画作品とは別モノとして扱われてきた。それが変わったのはつい最近のこと。2021年11月に公開された嵐のコンサートフィルム『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』(興収45億5000万円)と、2021年6月に映画館で劇場限定版Blu-rayの販売がおこなわれた『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(興収22億1000万円)が、翌2022年の年頭に発表された全国映画概況において「映画」として扱われてからだ。

 総じて、ファンムービー的な特質を持つ、アニメ作品のテレビシリーズの総集編やコンサートフィルム。今後も、主に2月のような閑散期の映画興行を「映画」としてますます支えていくことになるだろう。

■公開情報
『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』
全国公開中
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス
出演:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、小西克幸、河西健吾、花澤香菜、関俊彦、置鮎龍太郎、宮野真守、石田彰、古川登志夫、鳥海浩輔、沢城みゆき、逢坂良太
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
公式サイト:https://kimetsu.com/anime/
公式Twitter:https://twitter.com/kimetsu_off

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