2023年も目白押し 興行の安定化に欠かせないテレビドラマの映画化作品

興行の安定化に欠かせないTVドラマの映画化

 先週末の動員ランキングは、『THE FIRST SLAM DUNK』が3日間で動員28万4000人、興収4億2800万円をあげて7週連続1位。公開7週目にして前週との興収比が89%と驚くほど高い推移。公開から44日間の累計成績は動員567万人、興収82億7500万円。同じ東映配給で拡大公開される『レジェンド&バタフライ』の公開日1月27日までにどれだけ上積みできるかが、100億円突破の目安の一つとなるだろう。

 『すずめの戸締まり』の2位もこれで7週連続。つまり、『THE FIRST SLAM DUNK』に7週連続で1位を阻まれたことになる。もっとも、『すずめの戸締まり』の前週との興収比は69%と、さすがに公開10週目を迎えて下降幅が大きくなってきた。公開から66日間の累計成績は動員939万8000人、興収124億8800万円。

 新作で最上位となる3位につけたのは、浅見理都の同名コミックを原作に、フジテレビ系列で2021年にテレビドラマ化された『イチケイのカラス』の映画化作品、映画『イチケイのカラス』。週末3日間の動員は17万9690人、興収は2億3635万250円。監督は同テレビドラマのチーフディレクターを務めたほか、同じフジテレビのテレビドラマの東宝配給による映画化作品としては『コンフィデンスマンJP』シリーズも手がけてきた田中亮。ウィークデイに入ってからも安定した動員を続けていて、手堅くスマッシュヒットを記録しそうだ。

 コロナ禍以降ますます、年間を通じて動員ランキングの上位を国内のアニメーション作品に占拠されるようになってきた日本の映画興行。かつてはそれなりに安定感があったコミック原作の映画化作品も、作品によって当たり外れの格差が目立つようになり、そもそも「当たり」の本数そのものが激減してきている。そんな状況にあって、相対的にテレビドラマの映画化作品は、メジャー配給の実写映画としては数少ない「計算が立つ企画」となっている。映画『イチケイのカラス』もそもそもはコミック原作なわけだが、実写映画化との間に「テレビドラマ化」を挟んでいるところがポイントだ。

 そんな興行に安定をもたらす「テレビドラマの映画化作品」は、製作本数こそ以前ほどの数ではなくなってきているが、特定のテレビ局の作品にかかわらず配給では東宝作品に偏っている。2023年公開作品として今後予定されているのは、4月公開のTBS系列のテレビドラマの映画化作品、劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』、6月公開のテレビ朝日系列のテレビドラマの映画化作品、劇場版『緊急取調室 THE FINAL』、秋公開のフジテレビ系列のテレビドラマの映画化作品『ミステリと言う勿れ』。個人的に今年のメジャー配給実写作品としては6月に東宝とギャガの共同配給で公開される、坂元裕二による完全オリジナル脚本、是枝裕和監督の『怪物』に最大限の期待を寄せているのだが、そんなチャレンジングな企画が実現するのも「テレビドラマの映画化作品」による興行の安定化があってこそなのだろう。

■公開情報
映画『イチケイのカラス』
全国公開中
出演:竹野内豊、黒木華、斎藤工、山崎育三郎、柄本時生、西野七瀬、田中みな実、桜井ユキ、水谷果穂、平山祐介、津田健次郎、八木勇征、尾上菊之助、宮藤官九郎、吉田羊、向井理、小日向文世
原作:浅見理都『イチケイのカラス』(講談社『週刊モーニング』)
監督:田中亮
脚本:浜田秀哉
音楽:服部隆之
主題歌:Superfly「Farewell」
配給:東宝
製作:映画「イチケイのカラス」製作委員会
©︎浅見理都/講談社 ©︎2023 映画「イチケイのカラス」製作委員会
公式サイト : https://ichikei-movie.jp
公式Twitter : @ichikei_cx
公式Instagram : @ichikei_mimamoru

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