『大奥』原作では語られなかった“お万好み”の理由 仲里依紗を取り巻く愛憎劇が開幕

『大奥』仲里依紗を取り巻く愛憎劇が開幕

 千恵の死後、彼女の影武者であった正勝(眞島秀和)も自ら命を絶った。有功はすでに父を亡くした娘・千代姫を支えてほしいとの千恵の願いを聞き入れ、大奥に留まるが、千代姫が四代将軍・家綱となった時代に出家を果たす。そこにも理由があるのだが、それは原作でお楽しみいただくとして、最も江戸が華やいだ時代の到来である。

 堀田真由と福士蒼汰らが繊細な演技で映し出した残酷さの中にある美しい愛の物語から、我々が抜け出せないであろうことは作り手もお見通し。「ちょんちょんちょんちょん……」という柝の音と、阿佐ヶ谷姉妹による聞いたか坊主で強制的に新章へ我々を誘う。

 大奥と聞いて、誰もが思い浮かべる愛憎渦巻くドラマ。それが、「五代将軍綱吉・右衛門佐編」だ。家光の時代とは違い、誰もが己の欲求を満たし合うこの時代。その頂点にいるのが、“当代一の色狂い”と噂される五代将軍・綱吉(仲里依紗)である。

 見るも鮮やかな着物に身を包んだ綱吉は男遊びも派手。そのことを表すエピソードとして、館林城主時代に親密であった“阿久里”こと、牧野邦久(吉沢悠)との情事が描かれる。邦久は綱吉の側用人である成貞(内田慈)の夫だが、大奥の男たちに飽き飽きしている綱吉はかつてのお気に入りである邦久を大奥に呼び寄せ、その身体を支配した。結果的に邦久は命を落とし、成貞も職を辞して隠居。他人の人生を狂わせるほどの妖気と美貌を兼ね備えた存在を仲里依紗が体現する。

 また、その裏でも人々の思惑と欲求が渦巻く。そもそも、牧野邸に綱吉を向かわせたのは側用人の柳沢吉保(倉科カナ)がことの顛末を見込み、成貞を排除するためだった。あの有功を慕う玉栄、つまりは綱吉の父として大奥に君臨する桂昌院(竜雷太)でさえも今や俗まみれ。娘や孫までも保身のために利用し、出家した身でありながら吉保と関係を持っている。

 有功が大奥にもたらそうとした清らかさは何処にも見当たらない。そこに有功と同じく公家出身の右衛門佐(山本耕史)がやってくるが、この男がまた曲者のようで本作はドロドロとした人間ドラマに染まっていく。

■放送情報
ドラマ10『大奥』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~22:45放送
出演:福士蒼汰、堀田真由、斉藤由貴、仲里依紗、山本耕史、竜雷太、中島裕翔、冨永愛、風間俊介、貫地谷しほり、片岡愛之助ほか
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
制作統括:藤並英樹
主題歌:幾田りら
音楽:KOHTA YAMAMOTO
プロデューサー:舩田遼介、松田恭典
演出:大原拓、田島彰洋、川野秀昭
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社

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