『アンサンブル』最終話目前で描かれた“別れ”の期間 田中圭が見せた往生際の悪さ

『アンサンブル』描かれた“別れ”の期間

 真戸原(松村北斗)の実母・ケイ(浅田美代子)が現れたことで、真戸原の育ての母である有紀(八木亜希子)は夫でありケイの弟でもある和夫(光石研)の隠しごとを知り家を出ていく。さらに真戸原自身も突然たかなし法律事務所を辞め、何も言わずに瀬奈(川口春奈)のもとを去る。そして瀬奈は、かつて宇井(田中圭)が突然いなくなった8年前と同じように部屋に閉じこもってしまうのである。

 思いのほかすぐにけろりと部屋から出てきて、もう吹っ切れたと言うあたり(明らかに吹っ切れてはいないわけだが)は、瀬奈もずいぶん大人になったのであろう。何はともあれ3月15日に放送された『アンサンブル』(日本テレビ系)第9話。ライバルの存在という障壁を無事に越えて瀬奈と真戸原が交際をスタートさせたのがドラマのちょうど中間。後半戦に入ってからは恋人同士としての意思疎通の難しさなど新たな課題が立ちはだかっていたわけで、どのようなフィナーレを迎えるにしても、最終話ひとつ前のエピソードでこうして“別れ”の期間を描くのは典型パターンといえよう。

 それこそ、これが一時的な別れであり、お互いがすっきりした状態で2人の交際が今度こそ本当にスタートするのだという幕切れが理想的だ。それこそちょっと前の韓国の恋愛ドラマのようなパターンではあるが――そういえば、事務所の事務員である星野(東野絢香)は初期のエピソードでよく韓国エンタメの話をよく口にしていたが、いつのまにかその設定がなくなっているようだ。いずれにせよ、瀬奈を「幸せにできない」と思い悩む真戸原に、瀬奈が「幸せにしてほしい」ではなく「幸せにしてあげたい」を提示するのが、2人の、このドラマの行き着くところなのだろう。

 真戸原と瀬奈が遠く離れた場所におり、連絡は取り合わない。真戸原は自ら別れを決意して離れ、瀬奈は自分の発言が負担だったのではと決め込んで吹っ切ろうとする。この状態で両者がよりを戻すためには、どちらかの感情が“なんらかのきっかけ”をもって動く必要がどうしてもある。その“なんらかのきっかけ”が、多少ありきたりでも偶発的に見出されたり、これまで物語を散々掻き回してきた宇井が担えば終幕へ向けたまとめの道筋もできたのだが、ずっと真戸原の近くで“いい奴”であり続けた樹理(戸塚純貴)が“いい奴”のままで瀬奈を説得したり、久々に現れた可奈子(横田真悠)がしれっと担うのだから、あまりスマートなストーリー運びとは言い難い。

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