新原泰佑が『御上先生』御上宏太役で放った衝撃 杉村春子賞も受賞で一気に飛躍のときへ

新原泰佑とは何者なのか

 新原泰佑が日曜劇場『御上先生』(TBS系)で鮮烈な印象を残した。新原泰佑が演じたのは、松坂桃李演じる御上孝(中学時代・小川冬晴)の兄・宏太である。第1話、若き御上孝とその兄・宏太の回想シーンはドラマの核になるものであった。The personal is political(個人的なことは政治的なこと)とは「政治が解決する問題だってこと」と、宏太は孝に言う。この大事な言葉を新原が任されたのである。

 第1話ではふたりの関係はぼかされていて、「同級生や先輩後輩なのかな?」とも思えるが、新原はややお兄さん的な雰囲気を出していた。その後、ふたりの関わりは小出しに書かれ、はっきりしたのは第6話。そこでは宏太の物語が描かれた。孝の考え方に多大な影響をもたらした人生の先輩である宏太は聡明でつねに弱者の味方に立ってきた。ところがあるとき、母校と学校の方針をめぐって対立、四面楚歌になり、抗議の校内放送をしたうえで自死する。短く燃えた命の壮絶さ。孝に対して語りかける知性的な穏やかな表情だったのが、学校に自死をもって抗議を完遂すると宣言したときの、端正な顔を激しく歪ませた表情は同じ人物には思えなかったし、いまなおその顔が網膜に焼き付いて離れない。

 精神に不調をきたすまえの宏太は知的な話をじつに楽しそうにしていて、頭のいい人の思考のクリアさ、視界の明るさ、前向きさにあふれていて、それを新原はナチュラルに演じている。クレバーな俳優は多いが、“ワイズ(Wise)”という言葉が合う賢さが表現できる俳優は限られていると筆者は思っている。新原は後者に見える。24歳でも高校生のみずみずしさをまだ持っているし、24歳にして表現の振り幅が大きいと感じた。新原泰佑とは何者なのか。

読売演劇大賞で杉村春子賞を受賞した新原泰佑

 新原泰佑は“日本一のイケメン高校生”を決める「男子高生ミスターコン2018」にてグランプリを受賞してデビュー。4歳からダンスを習っていて、HIPHOPやJAZZDANCEなどを得意としている。演技にも意欲的で、舞台やテレビドラマで活動。2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では主人公・北条義時(小栗旬)と妻・のえ(菊地凛子)の息子・四郎を演じた。そのほか、ドラマ『アオハライド』(2023年/WOWOW)、『なれの果ての僕ら』(2023年/テレビ東京系)、『25時、赤坂で』(2024年/テレビ東京)には初のW主演で出演し、初夏には主演映画『YOUNG & FINE』が控えている。

 舞台での活躍も多く、舞台『球体の球体』『インヘリタンス-継承-』(2024年)、『ロミオとジュリエット』(2023年)、『ラビット・ホール』(2022年)、Produced by 地球ゴージャス 音楽劇『クラウディア』(2022年)、『ニュージーズ』(2021年)などに出演し、2025年2月、演劇界の権威ある賞・読売演劇大賞で杉村春子賞を受賞した。杉村春子賞とは優れた新鋭に贈られるもので、過去、藤原竜也、三浦春馬、松下洸平、菅田将暉、清原果耶などが受賞している。新原の受賞のきっかけとなったのは、2024年の舞台『インヘリタンス-継承-』と初主演となった舞台『球体の球体』での功績によるものである。

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