『#家族募集します』が描く“理想”への試行錯誤 橋本じゅん、木村文乃が気づいた笑顔
金曜ドラマ『#家族募集します』(TBS系)では、いくつもの「理想」が描かれる。まずは、大きなテーマとなっている他人同士による子育てのシェア。俊平(重岡大毅)たちシングルファザー、シングルマザーが直面するワンオペ育児の大変さを分け合い、そこから生まれた余裕と共に子どもたちの成長を見届けることができたら……そんな新しいカタチの家族を実現しようと試行錯誤を繰り広げていく。
同時に、彼らが生活の拠点とするお好み焼き屋にじやの経営難を立て直そうと蒼介(仲野太賀)が画策しているのも、ひとつの理想だ。創業者が高齢となった個人経営店が新しい風を吹かせるのは、簡単ではない。そもそも「#家族募集します」の始まりも、家賃収入があればおやっさんこと店主・銀治(石橋蓮司)の生活の足しになるのでは、というアイデアがもとだった。
現実はキレイごとで済まされる問題ばかりではない。しかし「どうせ無理だ」とリスクヘッジが重視される現代において、俊平や蒼介の奮闘を見ていると「こうしたらいいんじゃないか」という思いつきを大切にしたくなってくる。めいく(岸井ゆきの)に感化された礼(木村文乃)のようにときには成り行き任せでやってみよう、という気持ちにも。諦めることばかりが得意になってしまった私たちの心を温め、何かを始める背中を押してくれるような感覚になるのだ。
第5話では、また新たな理想的な展開を見届けることができた。それは離婚して、娘のいつき(板垣樹)と疎遠になっていた黒崎(橋本じゅん)の見せた優しい笑顔。いくら本当の家族であっても、どんな風に笑い合っていたのか忘れてしまうこともある。大事なことは、それでもまた近づきたいと思えるかどうか。お互いに「ごめんなさい」と素直に謝ることができた黒崎親子は多少のぎこちなさを残しながらも、距離を縮めることに成功した。また、にじやメンバーのリモート家族メンバーとして繋がり続けることになったのだ。
そんな黒崎親子に触れることで、礼は正式な離婚への決意を固める。それは、礼が「理想」だと思っていたものは、自分たちなりの幸せを作ることではなく、独りよがりに押し付けていただけだと気づいたから。理想的な家族とは、家族の数だけ形があっていいのだ。例えるなら、クッキーのように型押しするのではなく、お好み焼きのようにヘラで生地を整えながら形を作り上げていくものなのかもしれない。ときには、意外な味付けのパンケーキお好み焼きがあってもいい。丸くないワンハンドタイプのお好み焼きがあってもいいのだ。そこに思わず笑顔になれる時間=理想的な瞬間があれば。