『小林さんちのメイドラゴンS』は演出が凄い! 京アニの力量感じるシーンを解説

 月刊アクションにて連載中、クール教信者による人気漫画『小林さんちのメイドラゴン』のTVアニメ第2期となる『小林さんちのメイドラゴンS』が、2021年7月から放送中だ。

(c)クール教信者・双葉社/ドラゴン生活向上委員会

 2017年1月から4月まで放映された第1期の続編となる第2期、アニメーション制作は前作と同じく京都アニメーションが担当。京都アニメーションのTVアニメシリーズ復帰作とあって期待を膨らませていたファンは多いだろう。

 本作は、アパートに住むOLの小林さんのもとに、メイドとして押しかけて同居しているドラゴンのトールと人間と敵対関係にあった世界からやってきたドラゴンたちの物語。主義主張がバラバラのドラゴンたちが現代の人間社会でどのように折り合いをつけていくのか、人間もまたドラゴンとどのように関わっていくかがポイントになっている。

 とはいえ、同じく動物の擬人化を設定に入れた『BEASTARS』(フジテレビ系)や『オッドタクシー』(テレビ東京ほか)などのようなシリアスさはあまりなく、全編を通して明るくポップなタッチで描かれているのが特徴的だ。トール、カンナ、エルマ、イルルのドラゴン同士の関係、小林に一方的な愛をアピールするトール、それをクールにあしらう小林……「人間だったらありえないだろ」とツッコミたくなるような行動や言葉を用いて、ボケとツッコミがうまく絡んだ会話劇に仕上げている。鼻血・顔芸などを活かした漫符的表情の数多さや大袈裟なリアクションで、カラフルでポップなキャラクターたちがより活き活きと感じられよう。

【期間限定公開】TVアニメ『小林さんちのメイドラゴンS』ノンテロップオープニング映像

 こういった本作のテクスチャーは、2007年に放映された『らき☆すた』(TOKYO MXほか)と近いものに感じる。加えて言えば、『けいおん!』(TBS系)『氷菓』(TOKYO MXほか)『日常』(TOKYO MXほか)における日常系作品と、『AIR』(BS-i)『Kanon』(BS-i)『CLANNAD』(TBS系)のようなファンタジー系作品といった、これまで京都アニメーションを彩ってきた2つの作風が延長線上でクロスしたかのように受け取れよう。

 キャラクターそれぞれがファンタジーでありながらもどこかリアリティを感じるのは、ストーリーの力はもちろんだが、演出や作画が大きく影響しているだろう。以下では、5話の印象的だったシーンを抜粋しながら、京都アニメーションが手がけたその魅力を紹介していきたい。

 まず序盤を見てみよう。ここではバトルシーンが描かれ、ドラゴンたちの皮膚・鱗・瞳が太く強調された。ここまでのストーリーにはあまりなかった威圧感あるシーンだったが、次のエピソードでは一転。部屋でぐうたらと横になってモソモソと動く人型のイルルを柔らかいタッチでユッタリと描いている。線の太さ、スピードの遅速を対比的に置くことで、メリハリをついた作劇となっており観る人を惹きつける。

 演出力の巧みさは、劇中の何気ない会話にも表れている。5話では、商店街の外れにある駄菓子屋で働こうと決めたイルルが小林に報告する場面がある。その15分18秒から始まる一連の流れは、5話のなかでももっとも繊細なシーンだ。

 ドラゴンでありながらも幼い頃から人間の子供と触れ合っていたイルルは、その後いくつかの出来事を経て人間を憎むようになってしまった過去がある。駄菓子屋で遊ぶ子供たちをみて発作的に働くことを決めたイルルは、なぜ自分は駄菓子屋で働こうと思ったのか自分でも分かっていないようでもある。

 イルルが小林に報告する場面では、働くことに不安げなイルルを左側から映した後、イルルを優しく見つめる小林の真正面と後ろ姿を捉えたカットが続く。

 「不安? 興味あることを選んだんでしょう?」「うん……」という会話を経て、小林はイルルの後ろから頭を撫でながら「わたしは何となく始めてやりがいを見つけた感じだから、そういう入りかたは良いと思う」と声をかける。イルルに寄り添うように小林が横に並ぶカットからは「不安な心境は人もドラゴンも同じ」という意味合いを感じ取れるし、小林がイルルを支えようとする様子も見えてくる。

 最初のカットではイルルを左から捉え、頭を撫でるタイミングではほぼ同じ視点から小林が入りこみ、最後はイルルの顔面のアップを映す。そして、イルルの顔は不安げな表情から徐々に照れた表情へと変わっていく。この何気ないシーンに、小林とイルルの関係性の変化も見えてくる。

 イルルの目の動き、小林が頭を撫でる動き、イルルが不安な瞳から頬を赤らめる様子など心境の変化とキャラの動かし方が非常にマッチしているし、「どのキャラクターをどの角度から撮るか」という絵コンテの切り方も、効果的に作用している。

 15分18秒から始まるこのシーンはわずか30秒。だがこのわずかな時間で、イルルの不安は解け、小林に心を許していることがよくわかる。様々な意図を含ませながら破綻しないように丁寧かつ簡潔に描いたこのシーンにこそ演出の妙が表れているといえるだろう。小林役の田村睦心とイルル役の嶺内ともみの演技も、言葉少なながら2人の心情を理解していることが伝わってくる。

 またこの直後、親密になった2人をみたトールが慌てて小林にアピールをする場面もあり、その慌てた動きや表情、トール役の桑原由気による若干うわづった声と演技で、このシーンはさらにグッと引き立つ。しっかり落としどころも用意している点もさすがだ。



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