『小林さんちのメイドラゴンS』は“京アニらしさ”満載 4年のブランク感じさせないその魅力
マンションで独り暮らしをしているOL・小林さんのもとへ、半ば押しかけメイドとしてやってきたドラゴンの女の子トールと、その仲間のドラゴンたちが巻き起こす騒動や、ゆるい日常を描いたテレビアニメ『小林さんちのメイドラゴン』(2017年)。現在放送中の『小林さんちのメイドラゴンS』(以下、『メイドラゴンS』)は、その第2期にあたる。
制作会社の京都アニメーション(以下、京アニ)を襲った痛ましい事件後では初めてのテレビアニメという事情もあり、2021年2月に『メイドラゴンS』の第1弾PVがネットにアップされるや、日本国内のみならず海外のファンからも京アニの帰還を喜ぶ声と、高水準のアニメーションを称えるコメントが書き込まれ、登場キャラクターたちが軽快なラップのリズムに乗せて作品を紹介するPVは、短期間で再生回数100万回を突破した。
7月から放送がスタートした『メイドラゴンS』のオープニングもまたラップの曲調で始まるのだが、ポップな文字を背景にしたキャラクターにカメラがズームしつつ次々とキャラが切り変わり、やがてメインタイトルが現れる手法が、京アニ制作の『日常』(2011年)のオープニングを彷彿とさせる。第1期から4年ぶりのアニメとなるが、ブランクを感じさせないキャラクターの掛け合いと映像の品質で、観ていてホッとできるのが嬉しい。
小林さんを性的に好きというラブラブなトール、カンナ(トールと共に小林さん家に同居するドラゴンの少女)に並々ならぬ好意を寄せていて、興奮が絶頂に達すると「ボヘェ~!」と絶叫する危ない小学3年生の才川さん、オンラインゲームにはまってネトゲ廃人と化しているファフニール、小学5年男子の翔太くんにグラマラスなボディでスキンシップを図ろうとするルコア……といった具体に、ドラゴン側も人間側も変なやつだらけなのに、第2期『メイドラゴンS』ではさらに、イルルというドラゴンの新キャラクターが加わわるのだから大変だ。イルルは幼い頃から植え付けられた価値観で、人間に敵意を抱くようになり、人間界で破壊行動をしようとやってくるのだが、まんまと小林さんの優しさに懐柔されて同居することになる。根は素直で良い子のイルルの可愛らしさは、これからもファンを増やしそうだ。日常アニメとしての楽しさを支える背景美術の美しさと、第1期から継続している色使いの優しさも、京アニらしい暖かな色合いがよく出ている。