宮野真守、『ウエスト・サイド・ストーリー』で見せたミュージカル・スターとしての“天賦の才”

ミュージカル・スターとしての宮野真守

 新たなるミュージカルスターの誕生だ。現在上演中のブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season1で、主役・トニーを演じる宮野真守を見てそう確信した。それほど、宮野のトニーは魅力的だ。

 今作は、1957年にブロードウェイで初演、1961年には映画版も公開され、世界中で長年愛されてきたミュージカルの名作だ。ジェローム・ロビンスによる印象的な振付と、レナード・バーンスタインによる名曲の数々は、このミュージカルを見たことのない人でも、どこかで目にしたり耳にしたりしていることだろう。物語はシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』に着想を得ており、1950年代後半のニューヨーク・マンハッタンのウエストサイドを舞台に、移民同士の敵対とそれに巻き込まれるトニーとマリアという若い2人の悲恋を描いている。

 11月6日から始まったIHIステージアラウンド東京での公演は、日本キャストによる日本語版上演のSeason1で、主役のトニーを宮野真守と蒼井翔太、ヒロインのマリアを北乃きいと笹本玲奈がそれぞれWキャストで演じている。筆者は、トニー役を宮野真守、マリア役を北乃きいが演じた回を観劇した。

 舞台の幕が開くと、ポーランド系移民のギャング集団・ジェッツと、プエルトリコ系移民のギャング集団・シャークスの敵対するシーンから始まる。ジェッツのリーダーはトニーの親友・リフ(小野田龍之介と上山竜治のWキャスト)、シャークスのリーダーはマリアの兄・ベルナルド(中河内雅貴と水田航生のWキャスト)だ。トニーとマリアに起こる悲劇を予感させる不穏な幕開きだが、メインの2人はここではまだ登場しない。

 場面がドク(小林隆)の経営するドラッグストアに変わると、ようやくトニーが登場する。宮野は登場するなり、マリアが一目で恋に落ちてしまうのもうなずけるようなスタイルの良い長身でまず目を引く。そして、舞台映えする外見だけではなく、その演技でも観客を魅了する。声優として絶大な人気を誇る宮野だけあって、とにかく声がいい。セリフも明瞭だし、歌手活動も行う歌唱力で難しいメロディーの楽曲も力強く歌い上げる。

 声の演技というのは、かなりの卓越した演技力が必要になる。つまり、声優として評価されている人々は、そもそも高い演技力を持った俳優でもある場合が多い。戸田恵子や神木隆之介がその代表的な例で、声優業と俳優業の両方を行いどちらも高い評価を受けている人は少なくない。

 宮野もまさにそうしたケースの声優であり俳優であると言えるだろう。声優としては『DEATH NOTE』『機動戦士ガンダム00』など数多くのアニメ作品に出演しており、その人気は絶大だ。俳優としては、近年では2016年に帝国劇場で上演されたミュージカル『王家の紋章』への出演や、2017年11月~2018年2月にかけて上演された劇団☆新感線「髑髏城の七人」Season月“下弦の月”で主演するなど、舞台で存在感を着実に示してきた。

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