宮野真守はギャップで魅了するエンターテイナー オールマイティな活動に通ずる“覚悟とプライド”

 国内アニメシーンにおいて、人気声優として確固たる地位を築いて久しい宮野真守。ドラマ『ゆうべはお楽しみでしたね』(MBS・TBS系)に俳優として出演したほか、映画『グリンチ』や3月8日公開の映画『スパイダーマン:スパイダーバース』、『ファンタスティック・ビースト』シリーズなど、海外の大作映画で主演の吹き替えを相次いで務め、洋画を中心とした映画ファンからも熱い視線が注がれている。アニメと洋画の吹き替えの両方で、これほど活躍し人気を集める声優はほかにはいない。なぜ宮野真守が、そうした存在になれたのか?

狂気からハイテンションまで、振り幅の広さは業界随一

ドラマイズム『ゆうべはお楽しみでしたね』(c)金田一蓮十郎/SQUARE ENIX (c)ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved. (c)「ゆうたの」製作委員会・MBS

 小学生のころから「劇団ひまわり」に所属し、15歳のときにはドラマ『3年B組金八先生』に出演した経験も持つ。声優としてデビューして以降もさまざまな舞台やミュージカルへの出演を重ね、昨年は、劇団☆新感線による『髑髏城の七人 Season月 <下弦の月>』に出演して、舞台役者としての経験も着実に積み上げた。演技力の高さは声優のなかでも群を抜き、数々の難しい役柄を演じてきた。宮野の人気を決定づけたのは、2006年のアニメ『DEATH NOTE』の夜神月役だ。同作の実写版映画で藤原竜也が怪演したことでも知られ、頭脳明晰な高校生がデスノートを手にしたことで、歪んだ正義に飲まれていく演技は圧巻だった。そうかと思えば『機動戦士ガンダム00』では、クールながら胸の奥に熱い意志を持った主人公の刹那・F・セイエイを熱演し、昨年の『多田くんは恋をしない』では、主人公の幼なじみの伊集院薫を演じて、ハイテンションのお調子者キャラがハマった。さらに『東京喰種』シリーズの月山習、『STEINS;GATE』シリーズの岡部倫太郎、『うーさーのその日暮らし』のうーさーなど、役柄の振り幅の広さは業界随一と言える。

 声優の演技は、ただスタジオで立ってセリフをしゃべっているだけではない。殴られたシーンでどういう声が出るのかなど、ときには実際にその動きをやってみることもある。アニメは非現実的なシーンも多く、とある声優は紙を食べるという変わった役柄を演じる際に、実際に食べたと聞く。役柄の気持ちをより理解するための努力や想像力も声優には必要不可欠で、その部分においても宮野は突出する。『DEATH NOTE』では、最終話のアフレコ収録が終われば自分も主人公と同じように死ぬと思い込んでしまうほど、役と同化していたという。どんな役柄であっても、そのキャラクターがまるで憑依したかのように演じられることも、彼の人気を支える要因のひとつだ。

 低音で甘さのある女性をとろけさせる声も、宮野真守を語る上では欠かせない。『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズの一ノ瀬トキヤ役を筆頭に、女性層をターゲットにした多くの作品でイケメンキャラを演じてきた。近年“イケボ”という言葉が一般的になったが、その先駆者こそが宮野だと言えるだろう。これまでに吹き替えを担当した俳優も、ジョニー・デップやエディ・レッドメインなどイケメン揃いなのもうなずける。

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