『ドクターX』圧倒的な人気誇る理由 “無敵の大門未知子”のマンガ的おもしろさを探る

 2年ぶりのシリーズ第4弾も、視聴率は1話20.4%、2話19.7%と、その人気に衰えは見られず、「『2ケタがやっと』の他作品など眼中にない」とでも言わんばかり。別次元の世界を突き進む『ドクターX~外科医・大門未知子』(テレビ朝日系)。

 「なぜこれほど人気があるのか?」、そんな編集部からのお題に応えるべく、一人勝ちの理由を探っていきたい。

 もちろん、米倉涼子演じる大門未知子の魅力が大きいのは言うまでもないが、それ以上に特筆すべきは、作品のコンセプト。今シリーズでも冒頭に「2016年、白い巨塔の崩壊は留まるところを知らず、命のやり取りをする医療は迷走を極めていた」「有名大学病院がブランド力の強化に奔走し、一方、高いスキルを持つ外科医は高額な金で海外に流出。医学界はさらなるグローバルな弱肉強食の時代に突入した」「そんな中、どこの組織にも属さないフリーランス、すなわち一匹狼のドクターが現れた」「たとえばこの女。群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、専門医のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼女の武器だ。外科医・大門未知子、またの名をドクターX」という長いナレーションが必ず入るが、このコンセプト自体に引きつけられている人が多い。

 たとえば、リアリティのある骨太な人間ドラマが見たいなら『白い巨塔』(フジテレビ系)がいいし、難手術に挑むスーパードクターとそのチームが見たいなら『医龍』(フジテレビ系)がいいのだが、「現在の視聴者が求めているのはそれらではない」ということ。

 大学病院の暗部を題材にしているのは『白い巨塔』と同じであり、スーパードクターが重病患者を救うのは『医龍』と同じだが、『ドクターX』における人間関係は簡略化され、その分エンタメにシフトして、気楽に見られる作品にしている。

 その証拠に、シリーズ初期は色濃かった「巨大医療組織vsフリーランスの女医」という図式がだんだんと薄れて、もはや「誰が出てきても最初から勝負にならない」ほど大門未知子の圧勝。巨大医療組織は、単なる“こっけいな噛ませ犬”として扱われている。

 しかし、ただ簡略化するのではなく、「大門のキャラクターと手術シーンをより鮮烈にする」「噛ませ犬として新たな大物・演技派俳優をキャスティング」「毎週の患者に時事性や社会風刺を採り入れる」というエンタメを徹底し、視聴者を喜ばせようとしているのだ。

 なかでも、噛ませ犬のキャスティングには、一切の妥協なし。これまで西田敏行、北大路欣也、伊東四朗、竜雷太、古谷一行、中尾彬、伊武雅刀、小林稔侍、笹野高史、勝村政信、段田安則、遠藤憲一、古田新太、鈴木浩介、三田佳子、室井滋、高畑淳子、ジュディ・オングらを出演させ、今シリーズでも吉田鋼太郎、滝藤賢一、泉ピン子、草刈民代を起用するなど、他局が悔しがる大物や演技派を次々に獲得している。

 しかも、男優全員が古く非効率な男社会の象徴となり、大門に負かされるための役なのだから視聴者はたまらない。難手術を成功させて患者を救うカタルシスに加え、大物や演技派男優たちが「御意」や腰巾着ぶりを見せた上で、情けなく負けていく姿に爽快感を覚えるのだ。

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