気負わず豊かな日々を送るーー北欧ライフスタイルが感じられる逸品映画4選
高福祉国家として知られる北欧では、誰もが平等に豊かな生活を送るチャンスと権利が与えられている。決して贅沢をするわけではなく、日々のカフェタイムや、短い夏を思い切り自然の中で楽しむサマーハウスでの休暇など、日常の暮らしを楽しもうとする姿勢こそが北欧の人々の得意技。北欧映画にはそんな彼らのライフスタイルはもとより、フィンランドが生んだマリメッコや、スウェーデン発IKEAなど北欧のオシャレなデザインや家具があちこちに登場するからたまらない。
フィンランドを代表するブランド、マリメッコの創始者アルミ・ラティアの人生に迫る『ファブリックの女王』(5月14日公開)女の決してあきらめない不屈の精神力と、柔軟な物のとらえ方は称賛に値する。総合的なライフスタイルを発信するというアルミの発想は、今でこそ世界中のファッションブランドの常識だが、それを60年以上も前に目指した女性の先見の明には驚かされる。
自分の人生のすべてが詰まった小さな家具店をつぶされた腹いせに、IKEA創業者の誘拐を目論む主人公の珍道中を描く『ハロルドが笑うその日まで』(4月16日公開)はノルウェー映画。やけっぱちの行動力はあっぱれだが、芋づる式にとんでもないハプニングに見舞われるハロルドの姿は滑稽で笑いを誘う。彼の店にずらりと並ぶ世代を超えて受け継がれていく重厚な家具も見事だし、手軽でポップなIKEAの家具の魅力も捨てがたい。長い歴史が生んだこの多様性こそが北欧の魅力でもある。
デンマークの海沿い小さな漁村を舞台に、19歳の少女の恐るべき純愛を描く『獣は月夜に夢を見る』(4月16日公開)では、抗いがたい宿命を背負った人々の悲しみと共に人生の希望を映し出す。“愛”によって結びついた男女の、恐ろしくも、ピュアな狂気のラブストーリーに戦慄すると同時に、憧れを抱かずにはいられない。もともと恋愛こそが究極の勘違いと幻想の上に成り立っているのだとすれば、誰しも愛という名前の夢を追い求める権利があるはずだ。