『呪術廻戦≡』虎杖悠仁の残酷すぎる未来が明らかに 作者・芥見下々は何を託したのか

※本稿は『呪術廻戦≡』最新話までのネタバレを含みます。

 『呪術廻戦』を最後まで読んだ人なら、誰もが「物語が終わった後、虎杖悠仁はどんな人生を送ったのか」ということを疑問に思っているはず。現在連載中のスピンオフ『呪術廻戦≡(モジュロ)』ではそんな期待に応えるように、虎杖の“その後”を仄めかすような描写が頻出している。

 とくに12月1日発売の『週刊少年ジャンプ』2026年1号(集英社)に掲載された第13話では、あまりに残酷な現実が突きつけられていた。

 念のため振り返っておくと、『呪術廻戦≡』の舞台となっているのは「死滅回游」から68年後の2086年。異星からの移民・シムリア星人が地球にやってきたことで、日本の呪術師たちが外交担当として奔走するというストーリーだ。

 直近の展開ではシムリア星人との交渉がこじれ、呪術師同士の決闘で決着するしかないという流れになり、地球代表にふさわしい呪術師として虎杖悠仁の捜索が行われている。そこで第13話では、虎杖と旧知の仲である釘崎野薔薇に話を聞くことになるが、彼女の口から出たのは意外な言葉だった。

 釘崎いわく、虎杖とは来栖華の葬式を最後に会っておらず、そのときに「もう葬祭の類には来ない」と告げられてしまったという。その理由について、釘崎はもう周囲の人々を見送ることに耐えられなくなったのではないかと推察していた。

 虎杖は『呪術廻戦≡』の時空では83歳のはずだが、呪胎九相図を取り込んだ影響なのか、不老に近い状態となっていることが示唆されている。見た目的にも老いていないようで、普通の人間として年齢を重ねている釘崎に対しては、申し訳ないような顔を見せるという。

人一倍仲間の絆を大切にしていた虎杖が、1人だけ孤独のなかに取り残されているという描写はあまりにも皮肉めいており、残酷だ。

しかも虎杖といえば、本編の第1話で病床にいた祖父から「オマエは強いから人を助けろ」「オマエは大勢に囲まれて死ね」という遺言を託されたことが戦う動機の1つとなっていた。第3話で呪術師になることを決意したのも、「多くの人を助け、感謝されながら見送られるような最期」を目指すためだ。

 だが『呪術廻戦≡』で示された未来は、その理想とあまりにもほど遠いと言わざるを得ない。ここで気になるのは、なぜ作者・芥見下々は虎杖をこのような境遇に追い込んだのかということだ。

虎杖悠仁は何を背負わされてきた? 『呪術廻戦≡』が目指す結末

 そもそも虎杖は、本編の最初期から「他人の痛みを背負う役割」を一身に引き受けてきたキャラクターだ。特級呪物・両面宿儺の指を飲み込み、その器になったのも、呪術師として戦う役目を背負っている伏黒恵が傷つくのを見ていられなかったからだった。また自身が呪術師になった後も、「他人が傷つくくらいなら自分が傷つきたい」というスタンスは一貫している。

 だからこそ、虎杖の身には苛烈な出来事ばかりが降りかかる。たとえばいじめられっ子の少年・吉野順平に手を差し伸べた際には、結局その凶行を止められず、さらには呪霊・真人による惨殺を許してしまう。さらに「渋谷事変」では宿儺に身体を乗っ取られ、街ひとつを焼き払い、多数の犠牲者を出すことになる。

 虎杖というキャラクターの魅力は、こうした災いのすべてを自分の責任として背負い込んだ点にある。悲劇を直接的に引き起こした“悪”が存在するとしても、そこに責任を押し付けるのではなく、あくまで自分のことを責め続けるのだ。

 しかも作中終盤には、「誰かを責める」という発想すら超えて、諸悪の根源である宿儺に救いの手を差し伸べるという決断にまで至っていた。もはやその倫理観は、人間の領域を超越しているように見える。あるいは作者の芥見はこうして虎杖に苦難の道のりを歩ませることで、一種の“聖人”へと至らせる意図があったのかもしれない。

 もしそこに芥見の意図があったとすると、『呪術廻戦≡』の残酷すぎる描写にも納得がいく。すなわち虎杖は聖人なので、人間としての幸せを手に入れられないということだ。

 しかしそれは裏を返せば、平和な社会を作るためにほかの人々が虎杖を犠牲にしたということでもある。この辺りの歪みをどう解消するかということが、今後の展開で大きな意味をもってくるのかもしれない。

 1つの予想にすぎないが、たとえばシムリア星のルメル族に“カリヤン崇拝”という文化があることと絡めて、虎杖という人間でも呪霊でもない存在の聖性が発見されるという展開があってもおかしくはなさそうだ。そうなれば、大勢に囲まれながら最期を迎えるという結末も現実味を帯びてくるのではないだろうか。

 本編から一貫したテーマ性を感じさせる『呪術廻戦≡』。作者が虎杖にどのような役割を担わせるつもりなのか、最後まで目を離せない。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる