『劇場版チェンソーマン レゼ篇』は珠玉の青春アクションアニメ映画に? 原作の見どころを読み解く

劇場アニメ『劇場版チェンソーマン レゼ篇』(以下、『レゼ篇』)が今年の9月19日に劇場公開されることが発表されたことで『チェンソーマン』のレゼ篇に注目が集まっている
『チェンソーマン』(集英社)は藤本タツキが2018~2020年まで週刊少年ジャンプで第1部を連載し、2022年から漫画アプリ「ジャンプ+」で第2部が連載している人気漫画。コミックスは現在20巻まで刊行されている。
本作は悪魔の跋扈する日本を舞台に、チェンソーの悪魔・ポチタと契約したデビルハンターの少年・デンジがチェンソーマンとなって悪魔や魔人と戦う姿を描いたダーク・ファンタジー漫画で、斬新な漫画表現と先の展開が全く読めないハチャメチャな物語が反響を呼んでいる。
2022年には、アニメ制作会社MAPPAによってアニメ化され、コミックスの5巻の途中まで映像化された。この度、映画化される『レゼ篇』は、5巻の途中から6巻までとなるエピソードで、主人公のデンジと謎の少女レゼとの出会いが描かれている。
※以下、ネタバレあり。
カフェでアルバイトをしているレゼと仲良くなったデンジは、夜の学校を二人で探検することになる。誰もいない教室で二人だけで授業をしたり、夜のプールで裸になって二人で泳ぐ姿は青春漫画としての楽しさと甘酸っぱさがあり、岩井俊二の映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を思い出させる。そして、突然、台風が起こり、二人が学校に閉じ込められる場面は、相米慎二の映画『台風クラブ』や、同作の影響を強く受けた細田守監督のアニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』を彷彿とさせる。
『チェンソーマン』の魅力の一つにデンジという思春期の少年から見た女の子の色気と得体の知れない内面描写があるが、レゼはまさに男の子から見た理想の女の子として登場する。そして、思春期の男の子が経験したい夢のシチュエーションが次々と展開されるのだが、もちろんそれだけで本作が終わるはずがない。
翌日の夜、デンジとレゼはお祭りを楽しむ。そこでレゼは学校に行かずに公安所属のデビルハンターとして悪魔との殺し合いを強いられているデンジの状況はおかしいと疑問を呈し、仕事をやめていっしょに遠くへ逃げないかと誘う。そして美しい花火が上がる中、レゼは悩んでいるデンジにいきなりキスをする。恋愛漫画なら完璧なシチュエーションで、このまま二人は逃げるのか? ドキドキしながら読んでいると、なんとデンジの舌がレゼに噛みちぎられてしまう。
実はレゼはデンジの心臓を狙う刺客で、爆弾の力を操るボムだったのだ。そこから物語はデンジを狙うボムと、デンジを守る公安のデビルハンターの戦いへと変わっていく。触れたものを爆発させるボムに対し、デビルハンターたちが使役する悪魔の力を駆使してボムを倒そうとする激しい攻防戦は見応えがあり、劇場アニメ化された際には、アクション映画として盛り上がるシーンとなるのではないかと思う。
中でも最大の見せ場となりそうなのが、終盤に展開されるボム&台風の悪魔VSチェンソーマンに変身したデンジ&鮫の魔人・ビームの戦い。巨大な鮫に変身したビームに乗ったチェンソーマンが空中でボムと台風の悪魔を迎え撃つシーンは迫力満点だが、このサメとチェンソーと台風というビジュアルは、アンソニー・C・フェランテ監督のSFディザスター映画『シャークネード』のオマージュとなっている。